任天堂創業家VS東洋建設、予告されたTOBの行方は?

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東洋建設が手がけるビル建設工事の現場(東京都千代田区)

任天堂創業家の資産運用会社が海洋土木大手の東洋建設に対してTOB(株式公開買い付け)を予告して1カ月が経過した。東洋建設は6月24日に開く定時株主総会で買収防衛策の導入について是非を諮ることにしている。予告されたTOBの行方はどうなるのか?

ヤマウチ側、6月下旬開始を予告

東洋建設をめぐっては前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングス(HD)が子会社化を目的としてTOBを3月末から開始。約580億円に上る大型TOBだったが、期限としていた5月19日までに予定していた数量の株式を買い付けることができず、TOBは不成立に終わった。

いうまでもなく、東洋建設にとって事はこれで終わりではなかった。

任天堂創業家の資産運用会社というのは「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス」(東京都港区)。任天堂の中興の祖、山内溥元社長(故人)の孫の山内万丈氏が率いる。ヤマウチ側はインフロニアによるTOB開始後、東洋建設株を急ピッチで買い進め、現在27.19%の株式を持つ筆頭株主になっている。

ヤマウチが東洋建設へのTOBを6月下旬をめどに始めるとする予告を発表したのは5月18日のこと。これに先立ち、ヤマウチは4月末、インフロニアを250円上回る1株1000円で東洋建設に買収を提案していたが、その際、TOBの開始時期については示していなかった。

では、ヤマウチは予告通りにTOBに踏み切るのか。ヤマウチはTOBにあたり、東洋建設経営陣の賛同・応募推奨を条件としている。現状、あくまで友好的TOBにこだわるスタンスだ。

一方、東洋建設は対抗措置としてヤマウチを標的とする買収防衛策を講じる構えで、対立関係を保ったまま。

買収防衛策への賛否、株主の判断は?

こうした中、今後の流れを決定づけるのが24日に都内で開かれる東洋建設の定時株主総会だ。第5号議案で買収防衛策の発動について賛否を問う。買収防衛策としてヤマウチ側の持ち株比率を低下させるために新株予約権の無償割り当てが想定されている。

米国の大手議決権行使助言機関のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)、グラス・ルイスの2社はいずれも買収防衛策に反対の議決権行使を行うことを推奨している。

果たして株主は買収防衛策に賛成するのか、それとも反対に回るのか。株価動向を見る限り、会社側が明らかに不利だ。

東洋建設株価の6月17日の終値は810円で、ヤマウチが買付価格として提示した1000円を200円近く下回る。ヤマウチは、買収防衛策によって「魅力な株式売却の機会の実現が著しく妨げられている」と主張しているが、相応の説得力を持つ。

今回、買収防衛策は承認されなければ、廃止されることになっている。となれば、東洋建設経営陣としてTOBに少なくとも反対する理由がなくなる。

他方、買収防衛策が会社側の目論見通りに承認されれば、ヤマウチによるTOBの動きを封じ込めることになる。友好的TOBを条件とするヤマウチとしては引き続き協議続行を余儀なくされそうだ。

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文:M&A Online編集部

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