スポーツクラブ大手の2022年3月期業績は回復傾向が広がり、2ケタの増収が相次いだ。本業のもうけを示す営業損益はコナミスポーツが3年ぶり、ルネサンスが2年ぶりに黒字復帰し、セントラルスポーツは黒字幅を拡大した。コロナ禍の影響から脱しつつあることが明らかになったが、足元ではエネルギー価格の高騰で運営コストが上昇しており、手放しで喜べる状況ではない。
スポーツクラブは新型コロナウイルス感染拡大の影響で年度初めの昨年4月末~5月末、東京・関西地区で臨時休業を余儀なくされた。6月から通常営業を再開し、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が解除された10月以降は利用者や新規入会者が回復に向かった。年明けにオミクロン株の流行が一時、会員動向に影響を及ぼしたが、年度末にかけて持ち直す展開となった。
こうした中、2022年3月期の業績は復調が顕著となった。1年前の2021年3月期はといえば、コロナ禍の直撃で記録的な業績悪化に見舞われ、売上高は3~4割減少し、過去最大規模の赤字転落が続出した。
コナミスポーツ(コナミホールディングスのスポーツ事業部門)は売上高15%増の420億円、営業利益1億円(前期は295億円の赤字)だった。前期は休業中の固定費と減損損失・閉店コストで計236億円を計上したが、22年3月期はこうした費用が6億円にとどまり、営業損益が大幅改善。辛うじて1億円の黒字ながら、3年ぶりに黒字転換した。
セントラルスポーツ、ルネサンスの専業上場2社も業績を大きく改善した。セントラルはコロナ禍の影響を受けながらも、この間、営業損益の黒字をキープ。22年3月期の営業利益は15億円と、40億円を超えていたコロナ前の水準にはほど遠いが、着実な回復を見せている。
ルネサンスは売上高の伸びが23%と最も大きく、営業利益も9億1000万円(前期は46億円の赤字)と2年ぶりに黒字転換した。会員数の増加、料金改定による会費単価の上昇、人材配置の見直し、水光熱費の適正管理、施設メンテナンスの内製化などの収支構造の改革が奏功したとしている。
苦戦中なのがティップネス(日本テレビホールディングス傘下)だ。売上高は14%と2ケタ増だったものの、営業赤字は30億円(前期は65億円)。最終赤字は56億円(同179億円)に膨らんでおり、保有資産の収益性低下に伴い、引き続き減損損失の多額計上を迫られたものと見られる。
ティップネスは直営167店舗のうち、24時間ジム「FASTGYM24」が110店舗を占め、マシンジム・スタジオ・プールを備えた総合型を主軸とする他の大手各社と事業構造が異なるという事情がある。
2023年3月期の見通しはどうか。売上高をみると、コナミスポーツが9.6%増の460億円、セントラルスポーツが11.6%増の450億円、ルネサンスは7.8%増の400億円を予想する。ただ、コロナ前の2019年3月期と比べ、コナミは175億円、セントラルは140億円、ルネサンスは60億円それぞれ下回り、回復途上であることに変わりない。
今後の懸念材料の一つが世界的なエネルギー価格の高騰だ。空調・照明やプール、浴室の燃料費などの運営コストが上昇傾向にあり、収支改善の妨げになるおそれがある。
◎スポーツクラブ大手の2022年3月期業績(▲は赤字)
売上高 | 営業利益 | 店舗数 | |
コナミスポーツ | 420億円(15%増) | 1億円(▲295億円) | 152 |
セントラルスポーツ | 403億円(12%増) | 15億円(73%増) | 181 |
ルネサンス | 371億円(23%増) | 9.1億円(▲46億円) | 102 |
ティップネス | 234億円(14%増) | ▲30億円(▲65億円) | 167 |
メガロス | 136億円(18%増) | ー | 43 |
ホリデイスポーツ | 121億円(6.6%増) | 3.3 億円(39%減) | 101 |
※コナミスポーツはコナミHD、メガロスは野村不動産HD、ホリデイスポーツは東祥の部門業績。店舗数は直営施設。
文:M&A Online編集部
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