レジャー産業を支える基幹設備企業・タックをM&A

足並みを揃えるか、一馬身リードをねらうか

そして2015年、東京都競馬は新たなM&Aを展開した。空調設備工事を行うタックから株式譲渡を受け、子会社化したのだ。

タックはこれまで、百貨店や金融機関などの大型施設の空調設備の設計・施工管理を中心に事業を進めてきた。そこで、東京都競馬のグループ企業となり、大井競馬場や東京サマーランドなどの空調工事を施工するなど事業の幅を広げることとなった。

では、なぜ東京都競馬はタックをM&Aしたのか。また、これまでの公営競技の拡大や他のレジャー施設の運営などとは“毛色”の異なるM&Aを実施した背景には何があるのか。

東京都競馬のホームページでは、タックの連結子会社化の目的を「事業基盤の強化・新規事業への展開」としている。

確かに、ここ10年で地方競馬に向ける消費者の眼差しがずいぶんと変わった。従来の競馬新聞を片手に鉛筆ナメナメするギャンブルオジさんのイメージは払拭され、東京シティ競馬(TCK)、トゥインクルレースが浸透、多くの人が楽しむ社交場の趣さえある。そうなると、空調設備の設計・施工・保守点検とともに、給排水衛生設備、消防設備、電気設備などをトータルで手がける必要性もぐんと増してきた。

従来はネーミングどおり「冬場に弱い」といわれていた東京サマーランドも、より大規模な空調や照明などの環境整備が必要なレジャー施設へと様変わりしつつある。

 そのとき、新たなレジャー施設を複合的に業態に展開する一方で、既存施設の拡充をめざす、“足場”をより強固にすべきという考えもあり、それは装置産業の宿命ともいえる経営判断でもある。そう考えると、傘下に基盤となる装置事業を営む企業を収めておけば、より迅速確実に事業展開が進むだろう。

 実は東京都も“カジノ構想”、統合型リゾート(IR)構想をまったく捨てたというわけではない。現在は大阪が有力だが、全国各地で手を挙げたIR候補地のうち、もし東京・大井地区にカジノ構想が実現したら、その空調・照明などの装置をどう迅速に実現していくか……、そのとき、東京都競馬株式会社によるタックのM&Aの真価があらためて問われるということもできる。

文:M&A Online編集部