カフェブームを受け、「カフェで、おいしいパンを」というニーズは根強くなっているようだ。個店に限らずチェーン店でも、焼きたてのパンを食べられるカフェを駅の周辺や街角でよく見かける。

 ところが、その店の親会社は? となると、「よく、わからない」というケースもある。東京・城南地区を中心に、関東一円でベーカリー&カフェを運営する「SAINT-GERMAIN(株式会社サンジェルマン)」もその1つだろう。

東急からJT、テーブルマークへ、“親”の変遷

関東を中心に、ベーカリー&カフェを運営する株式会社サンジェルマン。同社のウェブページによると、さかのぼること80年以上前の1934年10月、東横百貨店(現東急百貨店)の製菓工場としてスタートした業界の老舗だ。

 そして、1948年9月には東横食品工業として分離・独立し、東横百貨店の子会社になった。サンジェルマン1号店の出店は、東急百貨店のお膝元である東京・渋谷で、50年近く前の1970年10月のことだ。その後、1977年11月にはハワイにサンジェルマンアメリカを現地法人として設立し、ホノルルに海外1号店を出店した。

1979年8月には最初の転機が訪れる。東横食品工業のほか、中央食品、東横食堂という東急百貨店系の食品会社3社が合併し、東急フーズが発足した。東横食品工業は、東急フーズのベーカリー部門という位置づけになった。その後1990年2月には、ハワイのディーライト・ベーカリーを買収する。一事業部門という立場を離れ、サンジェルマンという名称で東急フーズから独立したのは1994年のことである。

首都圏の郊外、関東を中心に複数のブランドで多店舗展開を続けるサンジェルマンだが、2002年5月に2度目の転機が訪れた。日本たばこ産業(JT)<2914>がサンジェルマンの全株式を取得し、サンジェルマンを子会社としたのだ。日本たばこ産業がJTというコミュニケーション・ネームを導入したのが1988年、10年ほど経った2000年前後にJTは加工食品事業へ本格参入する。JTが食料品部門を事業の柱として強化していた時期に、サンジェルマンをM&Aしたことになる。

そして、2008年1月、サンジェルマンに3度目の転機が訪れる。JTが冷凍食品大手の加ト吉の株式を公開買い付け(TOB価格1株710円、買収額約1092億円)し、JTは加ト吉を子会社とした。ところが、JTのグループ会社による中国製冷凍餃子中毒事件があり、JTグループは食料品部門の再編を迫られた。その際に、JTが加工食品事業・調味料事業を加ト吉に移管し、事業統合を実施。それにより、加ト吉がサンジェルマンを傘下に置き、子会社としたのである。

その加ト吉は2010年1月、テーブルマーク株式会社と社名変更。サンジェルマンはテーブルマークの子会社となった。サンジェルマンとしては、自社の思惑とは別のところで、“親”が東急からJTに変わり、さらに加ト吉、テーブルマークに変わったということもできるだろう。

いま、テーブルマークは、サンジェルマンが保有している発酵技術をフル活用している。テーブルマークの事業の柱の一つであるベーカリー事業の焼成冷凍パンに、サンジェルマンが保有する発酵技術は欠かせないものだ。また、2011年11月に稼働したサンジェルマン横浜工場は、テーブルマークの焼成冷凍パンの製造拠点としての機能も果たしている。