「アベノミクス」をもじり、インターネット業界で注目を集めているのが「ジゲノミクス」。快進撃著しい株式会社じげんの成長戦略をこう呼んでいる。その成長の過程では、「え? なんであの会社がこの会社を買ったの?」と思わず驚かずにはいられない意外なM&Aがある。

 金融、証券、物販……と、インターネット企業による他業種買収は珍しくなくなったが、今回はネットメディアの対極にあるともいえる紙媒体、新聞折込み求人広告会社のM&Aを実施した事例について、プラットフォームの活用面の効果から取り上げる。

じげん<3679>、東海の新聞折込広告企業を買収

(買収金額 約31億円、買収時期 2017年1月)

 今日、転職、派遣、アルバイトなどの求人サイトは多種多様にある。じげんはそうした求人サイトの情報を一括して検索でき、さらに応募、問い合わせにつなげる『EXサイト』(転職EX、派遣EX、アルバイトEXなど)の運営を中心としたネットメディア事業を行っている。そのじげんが2017年1月、新聞折込み求人広告の企画・制作・発行を行う三光アドの全株式を取得し、完全子会社化した。

 じげんの企業コンセプトは、「ライフメディアプラットフォームを創造し、『生活機会』の最大化を目指す」だ。 そのじげんが紙媒体を取り込むことで、相互シナジーによるプラットフォームの拡張を意図したのがこの買収である。

 買収された三光アドは、東海地方において新聞折込み求人広告の企画・制作・発行を手掛け、東海地方の主要地域では市場シェア首位を確立していた企業。三光アドとしては、じげんのウェブマーケティングのノウハウを活用し、顧客基盤の拡充や集客力の強化を狙う。

 じげんは三光アドの顧客基盤と求人情報を運営するアグリゲーションメディアへと統合することで、ユーザーの利便性やクライアントメディアへの送客力の向上を目指す。

「アグリケーション」集合体、集約、凝集などのこと。同種の複数の物をまとめて一体化したもの、および、まとめる動作のことを意味する(http://e-words.jpより)

主要メディア事業の売上を分解して考える

 じげんの運営する主要メディア事業の売上は、「売上=UU×CVR×コンバージョンあたり単価」の数式に分解される。じげんでは、各項目をKPI(Key Performance Indicator=主要業績評価指標)と位置づけ、組織や事業、業務の目標の達成度合いを計る定量的な指標としている。

 UU(ユニークユーザー)は見込み客(サイトを訪れてくれるユーザーの数)である。そのうち、どれだけの割合が売上につながる行動をしたかがCVR(コンバージョンレート)である。その割合を乗じ、さらに単価(コンバージョンあたり単価)を乗ずると売上になる、という数式である。

 新聞折込み求人広告という紙媒体を中心に事業展開してきた三光アドの買収を、この数式に当てはめると、同社の顧客を取り込むことはダイレクトにUU数の増加につながる。また、求人情報を取り込み運営サイトの情報を充実させることは、ユーザーの選択肢を増やすこととなり、CVRの向上が見込めることとなる。その結果、全体の売上を押し上げる。

 じげんのKPIを、業界の大手プレイヤーと比較して見ると、その差はまだ大きいが、じげんはこれを「大幅な成長余地」と捉える。KPIごとに成長施策を定義し、実施するとともに、M&Aを軸とした成長戦略でさらなる事業規模拡大を目指す。

 じげんは、2013年11月に東証マザーズに上場して以来、約450件の購買条件の規定と対象企業の選定を実施し、そのなかから厳選した9件、総額約70億円(取得価額)のM&Aを実施してきた。現段階で負債調達による財務レバレッジを考慮すれば、最大で約100億円の投資余力を有しているという(同社2017年3月期第3四半期決算説明会等による)。

 じげんは、今後も引き続き投資基準と投資プロセスを運用したM&Aにより、成長投資を続けていく。 大胆なジゲノミクスの展開に注視したい。

まとめ:M&A Online編集部