え? なんであの会社がこの会社を買うの? この会社ってあのグループだったの? と思わず驚かずにはいられない、意外なM&Aがある。そんなディールを集めてみた。

今回からはIT業界を牽引するヤフーにスポットを当てる。買収の狙い、そしてそこから見えてくるものとは…?

ヤフー<4689>、アスクル<2678>を買収

(買収金額 約330億円 出資比率 約44.4%、買収時期 2015年8月)

アスクルといえば、多くのビジネスマンにとって「事務用品を、今日頼めば明日届けてくれる」オフィス通販として馴染みのある会社だ。国内ではアスクルと大塚商会の「たのめーる」がオフィス通販の2大勢力といってよいだろう。また、アスクルは一般消費者向け通販サイトとして「LOHACO(ロハコ)」も運営している。

アスクルは1993年3月、事務機器のプラスの通販事業部としてスタートした。1997年5月にはプラスがアスクル(株)に事業を譲渡して独自の事業を展開、2000年にはジャスダックに上場した(現在は東証一部)。

順調に成長軌道に乗ったアスクルがヤフーと「LOHACO」の展開において資本・業務提携を結んだのが2012年4月のことだ。アスクルにはBtoB(企業間取引)の通販事業に関して、物流機能、MD(マーチャンダイジング)機能などの優位性がある。一方のヤフーには、集客機能や決済機能において優位性がある。それぞれが相互に補完しあい、他のオンライン通販業者に対して、価格、品質、配送などのあらゆる点において優位性をもつEコマース(電子商取引)事業を展開するという狙いだった。

ところが、アスクルが2015年5月に自己株式の取得を進め、ヤフーの保有するアスクルの議決権所有割合が44.4%になったことを受け、ヤフーはアスクルを連結子会社にした。アスクルが自己株式の取得に要した金額は133億円。さらに、アスクルはヤフーを割当先とする第三者割当により普通株式を発行し、ヤフーは、第三者割当により発行される新株式を引き受けた。その株式の取得価格は約330億円となっている。

直近のアスクルの株主構成ではヤフーが41.46%となり、10.74%のプラスを大幅に凌駕する筆頭株主である。ヤフーは、アスクルの連結子会社化によって、「2016年3月期において、596億円が企業結合に伴う再測定による利益として計上される見込み」(2015年8月27日付、ヤフー・プレスリリースより)としている。

このM&Aの図式は、LOHACO、さらにアスクルを擁するヤフーが、アマゾンや楽天と同じ土俵でしのぎを削っているかに見える。しかしよく見ると、そこに「BtoCの事業の新たな芽が見えてくる」という考え方もある。それは、「運送に手間のかかる商品をネット通販で購入する」時代から「日用品の日常使い・普段使いのネット通販」の時代がきたということだ。ネット通販が消費者の日常のすべての消費に深く浸透するようになった。それだけに2017年2月、埼玉県三芳町で発生したアスクルの物流倉庫火災は、「顧客目線」を標榜するアスクルにもヤフーにも、インパクトは大きかったはずだ。

文:M&A Online編集部