え? なんであの会社がこの会社を買うの? この会社ってあのグループだったの? と思わず驚かずにはいられない、意外なM&Aがある。そんなディールを集めてみた。

前回に続き、IT業界を牽引するヤフーにスポットを当てる。買収の狙い、そしてそこから見えてくるものとは…?

アルプス社を吸収合併し、地図を自社開発へ

(買収金額 約3億2500万円 出資比率 100%、買収時期 2004年12月)

アルプス社は名古屋に本拠を置いていた地図製作会社。『アトラス』シリーズなどが評価され、地図出版事業を核として地図パッケージソフトのほか、パソコンや携帯電話用の電子地図をウェブ上で展開してきた。ところが、2004年12月に民事再生法を申請し、事実上倒産した。その背景には他社との競合激化や開発費の負担増、ソフトの価格低下などによる資金繰りの悪化があったようだ。

その事業を承継し、子会社化したのがヤフーである。譲受価額は約3億2,500万円。2004年12月16日付の「アルプス社の事業継承に関するお知らせ」というプレスリリースには、「アルプス社は大規模な地図情報データベースを保有し、それを活用した各種地図の企画制作、インターネット向けの地図データや地域情報の提供などの事業を展開してきた。同社のもつ情報資産やノウハウを活かし、地域情報サービスの一層の充実を図る」としている。

Yahoo!地図に統合

地図はインターネットでの情報提供者にも利用者にも、欠かせない情報である。その分野で、ヤフーには「Yahoo!地図」というウェブ上のサービスがある。サ―ビス開始当初、ヤフーは凸版印刷傘下であるマピオンのデータを活用していた。ところが、アルプス社を子会社とした2005年1月以降、「Yahoo!地図」はアルプス社のデータを活用し、2008年4月の吸収合併後には独自開発することになる。

2008年4月のヤフーによるアルプス社の吸収合併により、アルプス社は解散・消滅する。そのとき、地図情報などの実験サイト「ALPSLAB(アルプスラボ)」で「アルプス」の名称は残るとされていた。いわば「アルプス」という名の最後の砦である。実際に2006年3月、アルプス社はヤフーの子会社として、実験的なプロジェクトを試験公開する「ALPSLAB(アルプスラボ)」を開設した。インターネット上のさまざまな位置情報のマッピングを目的としたフリースクロール地図の「ALPSLAB base」と、ブログやウェブページなどに簡単に地図を貼りつけられる「ALPSLAB clip!」を公開し、アルプス社は「今後も新しい地図サービスをリリースしていく」としていた。ところが2011年7月、「ALPSLAB」はサービスの提供を終了する。アルプスの名称は完全に消えた。

その後、アルプス社の地図製作技術はどうなっているのか

今日、地図製作には地図本来の表現技術のほかにも、地図データの更新や整備のほか、新しい機能やコンテンツ、アプリの企画・開発など多岐にわたる技術が求められる。2009年7月にヤフーは名古屋支社を設立したが、旧アルプス社の人員は、この名古屋支社で引き続き地図製作業務を行っているという。

地図や地図情報は、まさに国土・国家そのものとさえいえる。その表現技術・スキルを手中に収めたヤフー。アルプス社の名称は消えても、培った技術はヤフーのなかで綿々と引き継がれているようだ。

文:M&A Online編集部