東京23区のど真ん中にある港区。都内有数のスポットの赤坂、六本木、青山、高級住宅街で知られる麻布、白金。そして、大小さまざまな企業が本社を構える虎ノ門、新橋。多様な魅力が詰まった港区のど真ん中にあるのが愛宕山(あたごやま)。そびえるという表現は似つかわしくないが、正真正銘、東京23区で一番標高が高い山なのだ。

高さ26mの愛宕山を貫く「隧道」

赤色の大鳥居をくぐり「男坂」と呼ばれる急な石段をのぼりきると山頂。高さは25.7メートル。江戸幕府を開いた徳川家康の命により防火・防災の神様として祀られる愛宕神社(1603年に創建)が出迎えてくれる。

新宿区の戸山公園には高さ44.6メートルの箱根山があるが、こちらは土で築かれた人造の山で、自然の山としては愛宕山に軍配が上がる。ちなみに、東京23区で第二の高峰はJR王子駅前にある飛鳥山(北区)。江戸時代から桜見物で名高い。高さ25.4メートルで、愛宕山にわずかに30センチ及ばない。

愛宕山には実は、もう一つの“勲章”がある。それが「愛宕隧道(ずいどう)」。要はトンネルのことだが、自然の山を掘削したものとしては東京23区で唯一とされる。長さ76.6メートル、幅9メートル。1930年に完成し、90年の歴史を刻む。

愛宕山を貫く「愛宕隧道」

高層ビルの谷間、都会のオアシス

愛宕山神社正面の「男坂」は86段、傾斜は40度ほどで、かなりきつい。別名は「出世の石段」。ある故事に由来するという。

三代将軍の徳川家光が通りがかり、梅が咲き誇る山頂を見上げて「誰か騎馬にてあの梅を取って参れ」と命じたところ、随行の家臣は皆、うつむくばかり。颯爽と一人の武士が愛馬とともに石段を上がり始め、見事、梅を献上した。この人物、曲垣平九郎は講談にも謡われ、日本一の馬術の名人として称えられたという。

ビルの谷間、緑に囲まれた山頂は四季の折々の変化を感じられ、都会のオアシスそのもの。水音に誘われる池には色とりどりの鯉が元気に泳ぐ。オフィス街が近いことから、昼時にはビジネスパーソンの姿が目立つ。茶屋もあるので、小腹も満たせる。

山頂の木々の間から「虎ノ門ヒルズ」を望む

愛宕山では1925年、ラジオ本放送が始まった。現在はNHK放送博物館(1956年開館、無料)があり、ラジオからテレビ、アナログからデジタルへの放送の変遷をたどることができる。

愛宕山へは6月6日に開業したばかりの虎ノ門ヒルズ駅(日比谷線)から5分ほど。山頂には石段をのぼるほかに、ふもとから車、エレベーターでもアクセスできる。

文:M&A Online編集部