帝国データバンクが実施した後継者不在率動向調査で、後継者不在企業が4年連続で減少していることが分かった。
同社が全国の全業種約26万6000社を対象に後継者の有無を調べたところ、後継者がいない企業は16万社で、後継者不在率は61.5%だった。これは前年より3.6ポイント低下しており、4年連続の減少となったほか、調査を始めた2011年以降で最低となった。
また2021年(10月時点)に事業承継を実施した企業の事業承継方法は「同族承継(全体の38.3%)」が最も多かったが、2017年と比較すると3.3ポイント低下した。
これに対し、買収や出向を中心とする「M&Aほか」が2017年より1.5ポイント増え、17.4%となっており、事業承継で脱ファミリーの傾向が強まり、企業を売却する事例が増えつつあることが鮮明になった。
後継者不在企業が減少した要因の一つに、政府が中小企業の経営資源の引き継ぎを後押しする施策を積極的に展開していることがありそうだ。事業承継補助金の運用や、経営や幹部の人材派遣、M&Aマッチングなどが進んでおり、こうしたサポートを受ける企業が増えている。
帝国データバンクが、後継者の存在する企業約10万社を対象に、後継者属性を調べたところ「子供」が最も多い38.5%となった。ただ「子供」と答えた企業は、前年から1.9ポイント低下し、調査開始以来初めて40%を下回った。
一方、割合が高まったのが「内部昇格」「外部招聘」や、買収などを含む「その他」などの非同族で、全体の35.0%に達し、前年から1.9ポイント増えた。
地域別にみると、三重県が最も不在率が低く35.8%だった。全国最低となるのは 2011年以降で初めてで、2021 年のなかで不在率が 40%を下回った唯一の県となった。
同県では 2019年の不在率 69.3%をピークに、急激に不在率が低下しており、地域金融機関などが密着して支援を行っていることや、経営や商圏が比較的安定している企業が多いことなどが背景にあるという。
一方、後継者不在率が最も高かったのが鳥取県で、74.9%となった。2011 年以降で最高だった前年の77.9%は下回ったものの、これまで全国トップだった沖縄県(73.3%)を初めて上回った。
帝国データバンクによると、「M&Aの普及や事業承継税制の改良、金融機関主導の事業承継ファンドの活動などが、後継者問題の解消に大きな役割を果たしている」としたうえで、今後も後継者不在率が減少する可能性が高いとしている。
文:M&A Online編集部
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