事業承継問題の切り札と目されるサーチファンド・ジャパンとは?

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サーチファンド・ジャパンの本社がある鉄鋼ビルディング

サーチファンドはサーチャーと呼ばれる経営者候補が、事業承継を望む中小企業を見つけて買収し、企業価値を高めてエグジットするものです。投資家は買収候補のサーチ活動やM&A資金に出資をし、配当や株式譲渡益でリターンを得ます。日本では、2020年10月に日本政策投資銀行、日本M&Aセンターホールディングス<2127>、キャリアインキュベーション(東京都千代田区)の合弁会社として誕生したサーチファンド・ジャパン(東京都千代田区)が有名です。

サーチファンドとはどのようなものなのでしょうか?サーチファンド・ジャパンの詳細とともに解説します。

・サーチファンドの詳細
・具体的な出資事例
・サーチファンドジャパンの概要

日本初のサーチファンド1号案件は創業64年の土木工事業者

サーチファンドは、1984年にアメリカのスタンフォードビジネススクールで生まれた概念です。買収後に企業価値を上げて株式の売却益を得る投資ファンドは、投資家から資金を集めてファンドレイズしてから投資先企業の選定を行います。サーチファンドはこの仕組みが大きく異なります。サーチファンドのポイントは経営者候補となるサーチャーの存在です。サーチャー個人に出資をするというとわかりやすいかもしれません。

サーチャーはサーチとM&Aにかかる資金を投資家から調達し、事業承継を望む有望な中小企業を探します。買収対象となるのは売上規模が数億円から数十億円前半で、安定したキャッシュフローが望める会社です。サーチファンド・ジャパンによると、IRR20%が典型的なモデルです。10億円の出資に対して5年後に25億円(2.5x)の価値にするとしています。サーチャーの報酬は年収1,000万円~1,500万円とストックオプションなどの株式報酬は最大で25%。トータルで見るとPEファンド投資先のCEOと同等となっています。

欧米では、サーチャーはトップMBAを卒業した30代前半のキャリア形成で注目を集めています。経営者としての経験が無くても社長になることができ、スタートアップと違って盤石な経営体制が確立されています。サーチファンドは、サーチャーの経験ではなく、ポテンシャルに期待をかけます。事業よりも人に投資をするスタイルは、シード期のスタートアップへの出資と近いところにあります。

サーチファンドはキャッシュフローが比較的安定した会社に、経営意識の高いサーチャーが代表として就任します。投資家はサーチャーに対し、M&Aに必要な資金などの出資を行います。投資家は経営に必要な情報を提供するなどサーチャーを支援し、二人三脚で企業価値向上に努めます。エグジットをして投資家は株式の売却益を得るというのが一連の流れです。

日本初のサーチファンドは山口フィナンシャルグループ<8418>の子会社山口銀行(下関市)、もみじ銀行(広島市)、北九州銀行(北九州市)が出資し、2019年2月に設立した「YMFG Search Fund」。このファンドの運営は山口キャピタル(山口市)とJapan Search Fund Accelerator(東京都中央区)が共同で行っています。1号案件は2020年2月の塩見組(北九州市)です。塩見組は創業64年の土木工事業者で、西日本エリアを中心に大型基礎杭打ち工事や海上改修工事を行っています。サーチャーは渡邊謙次氏。渡邊氏は立教大学観光学部卒、バブソン大学経営学修士課程修了。経営コンサルティング業やユースホステルの立ち上げを経験した後、2019年5月にサーチ活動を開始しました。社長就任時の年齢は38歳です。

塩見組の売上規模は10億円で営業利益は1億5,000万です。2020年2月に経営権を得てから年間3,000万円の固定費削減を行いました。今後は障害撤去や解体、都市開発などの新規事業への進出も視野に入れています。

■YMFG Search Fundのスキーム図及び案件

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