子会社の定時株主総会の日時・場所は、事実上親会社の意向・都合(子会社の本店所在地ではなく、親会社の本店所在地で子会社の定時株主総会も行うなど)で決定することが多いためです。
取締役会も書面決議で行うという方法もありますが、その場合には、取締役会を実際には開催していないので、再任者であっても、個別の就任承諾書を法務局に提出する必要があり、それも迂遠で避けたいという会社も少なくありません。
そこで、その場合の対処法として相談をよく受けるのが、定時株主総会を招集決定する取締役会(定時株主総会の1週間~2週間前頃に開催)にて、定時株主総会で取締役の再任決議が承認可決されることを条件に、予め代表取締役の選定決議を行っておくことの可否です。このような決議を、一般的には代表取締役の予選決議といいます。
代表取締役の予選決議につき、会社法上は規制がありませんし、本事例のように実務上の要請も少なくありませんから、何ら問題無く認められそうにも思えます。
しかし、現行登記実務上は、原則として定時株主総会をまたぐ代表取締役の予選決議による再任登記は、認められていませんので、ご注意ください。これは、代表取締役につき、現任取締役の意思が反映された取締役会で選定すべきとの考え方が、登記実務で徹底されているためと解されています。
つまり、定時株主総会前後で、取締役のメンバーが変わることも多々あると思いますが、そのようなケースにおいて代表取締役を定時株主総会前に予選してしまうと、定時株主総会で新たに選任された取締役の意思が反映されずに、定時株主総会以降の代表取締役を決めることが可能になってしまうので、好ましくないとされており、代表取締役の予選が認められていません。
一方で、定時株主総会で現任取締役が全員再任するようなケースであれば、定時株主総会前後で、取締役のメンバーが同じであり、取締役全員の意思を反映して取締役会を行ったことになるので、代表取締役の予選が認められています(昭和41年1月20日付民事甲第271号民事局長回答)。
現在の登記実務上、定時株主総会をまたぐ代表取締役の予選が認められるケースは、これに限られていますので、ご注意ください。
とはいえ、代表取締役の予選は、より柔軟な方法で活用したいとの実務上の要請が非常に強いので、今後、予選が認められるケースが拡充される可能性もあります。
たとえば、取締役の過半数が定時株主総会前後で同じメンバーなのであれば、取締役会としての決議要件は満たしていますので、一部の取締役に変更があったとしても代表取締役の予選を認めてもいいのではと当方は思います。
そろそろ事業を承継することを考えなければならないと思っている場合、経営環境の変化に対応できそうにないなら、M&Aで売却するのも一つの方法です。