会社を経営している父から、「死んだら株をやる」と言われました。
いったいどれくらいの価値になりそうですか?
回答者:税理士・畑中孝介
相談者:サラリーマン男性:45歳
<会社概要>
・創業 :1965年(未上場)
・売上高 :2億円
・営業利益 :200万円
・純資産 :4億円
・従業員数 :10人
●最初に着目するのは「営業利益」ではなく「純資産」
未上場会社の株式の場合、会社の規模の大小によって評価方法が変わります。会社の規模は、総資産や従業員数、売上高によって判断します。これらの評価基準は税法や関連する通達で細かく定められています。おおむね従業員が100人を超えるような会社は大会社とされます。
まず、小さな会社で最初に着目するのが「純資産」です。会社の総資産から負債を差し引いた純資産は、その会社が解散したときの価値、すなわち「解散価値」と同じ意味を持ちます。
小さな会社では会社が継続する場合よりも、解散することを中心に評価します。実際、この区分に分類されるような会社は、後継者が決まっていなかったり、跡取りがいたとしてもその覚悟を持っていないケースが多く見受けられます。
一方、大きな会社では事業を継続することを前提とします。ですから、同様の業種を参考にしながら、利益や配当などに着目した評価方法となります。大会社以外の小中規模の会社では、両方を併用します。
今回のケースは、中規模の会社と思われますので、まず純資産の4億円に着目します。創業して50年、年間の利益は少ないですが、着実な経営をしてきた印象を受けます。この純資産をベースに、利益と配当額を加味して評価します。
評価額は、だいたい純資産額(時価ベース)の6割ほどに着地するケースが多いことから、今回のケースでは2億5000万円から3億円といったところが、評価額のイメージになると思います。
もちろん実際には例外も含めてケースバイケースで、計算はこのように単純ではありません。実際の評価については税理士などに個別に相談していただくことになりますが、どのように評価するかといったポイントは知っておいていただければと思います。
未上場株の評価がこのように高額になるということを知らないでいると、後から大変なことになります。株を相続すれば相続税を支払わなければならないからです。今回の場合では、数千万円単位の納税義務が発生してしまうことになります。
このご相談に関しても、お父さまがお元気なうちに会社を継ぐのか、継がずに売却するのかを具体的に話し合っておくべきです。
取材・文:小林麻理/監修:M&A Online編集部
ビジネス・ブレイン税理士事務所 所長・税理士
1974年北海道生まれ。横浜国立大学経営学部会計情報学科卒業。 企業の連結納税や組織再編に関する知見を持ち、上場企業の子会社から中小企業・公益法人・独立行政法人・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務を行う。また、近年では種類株や信託、持株会社を活用した事業承継戦略の立案に注力している。戦略的税務・事業承継・税制改正などに関するセミナーや、「旬刊・経理情報」「税務弘報」「日刊工業新聞」「日経産業新聞」「銀行実務」など新聞・雑誌への執筆も精力的に行っている。