最低なのに憎めないジムと愛情深い妻の関係に注目

ジムもまたデロリアン同様に実在した人物である。冒頭から彼のお金に対する概念に衝撃が走る。麻薬取引で得たお金も汗水流して稼ぐお金も変わらないという。妻のエレン(ジュディ・グリア)との会話の端々にも、何度となく妻を裏切ったらしいことが感じられる。

そんな最低なジムに「あなたは人を見る目がないのよ」と呟くエレンの言葉に一瞬、自分のことを棚に上げて? と思う。しかし、デロリアンのある不正の現場を目撃したエレンに「彼がそんなことするはずないだろう」と盲目的に信じるジムが憎めないのと、エレンの冷静さに考えが変わる人も多いのではないだろうか。

窮地に立たされたデロリアンを待つ妻クリスティーナ(イザベル・アレイザ)との会話にも、エレンの愛情深さが見て取れる。ジムとエレン、デロリアンとクリスティーナ、モーガンとケイティ(エリン・モリアーティ)それぞれのパートナーとの関係性にも注目だ。劇中しばしば裁判でのシーンが現れるが、証言台に立つのがエレンだったなら、結末は少し違っていたかもしれない。

果たしてデロリアンは本物の"天才"なのか?

デロリアンは天才なのだろうか。一つ確実に言えるのは、彼の生み出した名車「デロリアン」は約6000台も現存しており、メンテナンスし大切に乗り続けるオーナー達が今なお多数いるということだ。一方で、麻薬犯罪に手を染める大きな理由として何千人という従業員たちを救うためだとジムに語るデロリアンに違和感をおぼえる。

彼らを救う方法は果たして、それしかなかったのだろうか。根底にあるデロリアンの夢の姿が、彼にその選択をさせたのかもしれない。良し悪しはもちろん別として、そこにはデロリアンの揺るぎない矜持を感じる。デロリアンは果たしてどうなるのか。ジムは最低なままなのか。ラストが秀逸だ!デロリアンからジムへの最後の置き土産に、どう意味合いを持たせるかで見方が変わりそうだ。

<作品データ>
「ジョン・デロリアン」
原題:DRIVEN
12月7日(土)公開。新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー中
監督:ニック・ハム
出演:リー・ペイス、ジェイソン・サダイキス、ジュディ・グリア、マイケル・カドリッツ
配給:ツイン
© Driven Film Productions 2018

文:宮﨑千尋(映画ライター)