買収で職を失った男が国務長官のチーム入り『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』

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『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』

買収に腹を立て、自ら会社を辞めて無職になったジャーナリストと、米国初の女性大統領を目指す国務長官。不釣り合いな2人が恋に落ちるラブコメディ。

<あらすじ>

国務長官として活躍する才色兼備のシャーロット・フィールド(シャーリーズ・セロン)は、大統領選への出馬表明を目前に控えていた。そんなある日、シャーロットはジャーナリストのフレッド・フラスキー(セス・ローゲン)と出会う。

才能はあるものの頑固な性格があだとなり職を失っていたフレッドとは実家が隣同士で、フレッドにとってシャーロットは初恋の人だった。思わぬ再会を果たした2人は、思い出話に花を咲かせる。

シャーロットは若き日の自分をよく知るフレッドに、スピーチ原稿作りを依頼。原稿を書き進めるうちに、2人はいつしか惹かれ合っていく。しかし、越えなければならない高いハードルがいくつも待ち受けていた。

出会いのきっかけは巨大メディア企業による新聞社の買収

フレッドが勤める新聞社が巨大メディア企業に買収される憂き目に遭う。3分の2が人員カットされる中、雇用を約束して慰留する上司に対し、フレッドは「くそったれ!ジャーナリズムは死んだ!」と捨て台詞を残して職場を飛び出してしまう。

地道な調査報道による権力監視を売り物にするローカル紙が経営難を理由に大手メディアに買収されたり、廃刊を余儀なくされる米国の新聞事情が垣間見えるシーンだ。

しかし、記者の再就職の道は厳しい。解雇なら失業手当が出たが、それもない。新たな職探しに難航するフレッドは友人に誘われ、セレブが集う自然保護団体のパーティーにもぐりこむ。そこで、シャーロットと再会。会場で彼女にしつこく言い寄ってきた、フレッドの会社を買収した巨大メディア企業のオーナーに喧嘩を売ってしまう。これがシャーロットに好印象を与えたのだから、人生は分からない。

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『プリティ・ウーマン』の男女逆転版?

フレッドが書いた記事を気に入ったシャーロットは自分の政策チームにフレッドを招き入れる。スウェーデン王室がホストを務める環境サミットにウインドブレーカーとカーゴパンツという“普段着”で同行したフレッド。シャーロットはその場に相応しい服装を用意させ、フレッドと世界各国を回る。

男女の立場が逆だが、企業買収を仕事とする実業家エドワード(リチャード・ギア)と娼婦ヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)が出会い、洋服を買い与え、仕事の社交に同行させるうちにヴィヴィアンが洗練されていく1990年公開の映画、『プリティ・ウーマン』を彷彿とさせるシーンが散りばめられている。

シャーロットの好きな曲は、『プリティ・ウーマン』の挿入歌として大ヒットしたロクセットが歌う「愛のぬくもり(It Must Have Been Love)」。シャーロットとフレッドが愛を確かめ合うシーンで流れるのが印象的である。


環境再生への抵抗勢力と戦うという現実世界を反映

現実世界でも環境問題は山積みである。先日スペインで開催された第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、小泉進次郎環境相がCO2排出量の抑制策や温暖化ガスの削減目標の上積みなどを打ち出せず、国内外から批判を浴びた。首相官邸の了解が得られなかったとの見方もある。

劇中、シャーロットの環境再生案の柱は「海、森林、ハチ」。海面上昇を抑え、森林破壊を防ぎ、ハチなどの花粉媒介者を保護する環境再生対策を提案し、三大汚染を排出する国に環境協定への署名をさせるシーンがある。一方で再生案を骨抜きにしようと画策する抵抗勢力が、あの手この手で立ちはだかる。妥協策を受け入れるか、それとも初志を貫徹できるか。

シャーロットの選択がクライマックスを盛り上げ、大いに笑わせてくれた。

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文:堀木 三紀(映画ライター/日本映画ペンクラブ会員)

<作品データ>
『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』
原題:LONG SHOT
監督:ショナサン・レウィン
脚本:ダン・スターリング、リズ・ハンナ
原案:ダン・スターリング
出演:シャーリーズ・セロン、セス・ローゲン、オシェア・ジャクソン・Jr、アンディ・サーキス、アレクサンダー・スカルスガルド
字幕翻訳:アンセたかし
2019年/アメリカ/カラー/英語/ 125分/シネマスコーフ/5.1ch/PG12
配給:ポニーキャニオン
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公式サイト:http://longshot-movie.jp/
2020年1月3日(金)、TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー

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