スターアップへの投資が数兆円単位で回るには、「ガバナンスされていない資金」がもっと必要

スタートアップ投資が増えない理由としては、他にももちろん複合的な要因はありますが、イノベーションとガバナンス、そして資金の関係でいうと、個人的には「緩いガバナンスしかない、または全くガバナンスがない」資金がもっと必要ではないかと考えます。

個人投資家

もっともわかりやすい例ではエンジェル投資家の自己資金がこれにあたります。「君の顔が気にいった!」みたいな理由でえいやっと流れるお金の量が、ここだけで少なくとも現在のスタートアップ投資水準である2,000億円水準まで増えないと厳しいのではないかという印象です。マザーズとジャスダックの時価総額合計は直近で約16兆円。このうちの1%程度がストックオプションの行使や現金化を通じてエンジェル投資の原資となれば、約1,600億円。少なくともエンジェル投資で2,000億円というのは、あり得ない数字ではないように思われます。

上場企業の短視的ガバナンスの適性化

次に考えられるのは、上場企業のガバナンス自体をもっと長期的な視点にシフトさせることが考えられます。ESG投資の考え方などもそのひとつと言えますが、もっと大胆な改革が必要です。最近になって、トランプ大統領は大企業の決算を四半期から半期に戻すというアイデア(業界団体との協議)をツイートしましたが、これがもし実現すれば非常に大きなインパクトがありそうです。これはガバナンスの退潮ではなく、短期的で強すぎるガバナンスの根本的問題の是正と捉えるべきでしょう。

四半期開示どころか連結決算もなかった時代にトヨタはハイブリッドに投資した

ガバナンスが緩いなかでこそ、お金をなにに使うか、という経営者本来の価値観や能力が試されると考えます。トヨタ自動車は、バブル期に本業と運用で得た(トヨタは実は当時かなり先進的な財テクも行っていました)巨額の利益を、多くの企業が行ったリゾートや不動産開発には投資しませんでした。そのかわり、当時全く実現の目途などなく、世界中の自動車メーカーが本気でやらなかった、ハイブリッド技術の開発(回生ブレーキシステムを含む)に投じました。

そして、自動車業界のゲームのルールを根底から覆したのです。 

初稿:2015年12月 改定:2018年8月19日(初稿時点のデータを直近まで更新し、分析結果に基づき加筆修正しているが、本稿の趣旨に大きな変更はない。

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