なぜスタートアップ投資が数兆円単位まで増えないのか

「上場企業の資金や、そこから出資を受けているVCの資金は、ガバナンスされた資金(投資に説明責任と結果が求められる資金)だから。」

東証一部クラスの大企業がアベノミクスの景気回復とともに内部に蓄積した現預金は、あくまで株主のものであり、その投資には明確な説明責任と比較的短期での成果が求められます。これはVCでも同様で、10年の運用期間中、実質5年で8年の投資を終え、7年が終了するころにはポートフォリオ全体で少なくとも3~5倍のリターンが見えている必要があります。 

こうした「ガバナンスされた資金」は、事業投資であれ、LP投資であれ、特にスタートアップ投資で最もリスクの高い、プレシリーズA(死の谷のど真ん中)のようなステージに回る資金には非常につながりにくいというのが正直な現場実感です。

当然多くの善意ある投資家は(事業会社であれ、VCであれ)死の谷のど真ん中で投資することこそが使命という思いをみな強く持って投資活動をされています。

しかし、やはり投資の7割は失敗するわけで、最近増えていると言われているM&Aイグジットでも、ニュースにならない多くの案件は元本回収もままならないのがM&Aに関わっていて日々接する正直な実態です。そのような案件が数件続くと、投資家がステークホルダー(出資者や株主)への説明責任を果たすために、より分かりやすく、皆が投資したい案件に資金が偏重していくことは仕方のないことです。