連結納税の失敗事例

×事例3(中小法人向けの特例が適用できなくなった例)

E社(資本金2億円)グループでは、E社を連結親法人、F社(資本金1億円)を連結子法人として連結納税制度を適用することにしました。

E社は資本金1億円以下の法人に該当するため、これまで中小法人向けの特例の適用を受けていました。中小法人向けの特例には、800万円までの交際費等の損金算入限度額、貸倒引当金の法定繰入率の利用、年800万円以下の所得に対する法人税の軽減税率(15%)など様々なものがあります。

なお、連結納税の制度とは関係なく、資本金5億円以上の親法人の100%子法人では、これらの中小法人向けの特例は受けられないことになっています。E社の資本金は2億円なので、これには該当しません。そこで、F社では中小法人向けの特例が適用されることを前提に交際費の支出や貸倒引当金の計上を行っていました。

ところが、連結納税において、このような中小法人向け特例の適用の可否は、連結親法人の事業年度末の資本金をもとに判定することになっています。つまり、連結親法人であるE社の資本金が2億円であるため、これらの適用を受けることができなくなります。

本来は、グループ管理の一環として親会社E社から子会社F社に対して十分に注意喚起しておくべきケースだったといえるでしょう。

×事例4(連結納税グループへの加入・離脱が裏目に出た例)

積極的にM&Aを展開して複数の100%子会社を擁するG社グループでは2018年3月期から連結納税を導入する予定です。

この事業年度である2017年9月1日にもH社の株式を取得して100%子会社としたところです。しかし、G社ではH社を連結納税からは除外したいと考え、2018年3月15日に株式のうち10%を売却して、90%保有の子会社にしました。税務申告時にはすでに100%子会社ではないためH社は連結納税の対象外であるという認識でした。

しかし、制度上は、2017年9月1日から2018年3月14日までの間はH社が連結納税グループに加入していたという扱いになります。つまり、H社においても連結納税の作業が発生することになります。

具体的には、H社では2017年8月31日を最終の単体申告事業年度末日として税務申告する必要があります。その際には、原則どおり保有資産の時価評価も必要となります。その上で、2017年9月1日から2018年3月14日までの期間は「連結法人としての単体申告」が必要となります。

さらに、2018年3月15日から2018年3月31日までの間は「みなし事業年度」とされ、H社単体の税務申告が必要となります。このように、E社およびF社では過分に事務作業が増える結果となってしまいました。ちょっとした不注意が失敗をもたらす連結納税の危うさを示す事例といえるでしょう。

■連結納税の失敗を避けるためには?

これらのような失敗を避けるには、連結納税の全体像を理解した上で導入の検討をすることに尽きます。ただし、今回ご紹介したもの以外にも連結納税の落とし穴はたくさんあります。専門的な判断を要する分野であるため、税務専門家による「有利不利判定」や「影響度調査」を依頼するのが現実的な方法といえます。

文:北川ワタル(公認会計士・税理士)/M&A Online編集部