視点1:シンプルに、ドイツ=ネオナチといっている可能性
歴史を振り返ると、プーチンが憧憬してやまない「偉大なソ連」は、ナチスドイツとの闘いに勝利することで戦後共産主義陣営のリーダーとなった。そしてソ連時代のプーチンはKGBの東ドイツ諜報部員として西ドイツと対峙し、ベルリンの壁崩壊という恥辱と敗北を目の前で味わった。
こうした原体験を持つプーチンにとって、EU、NATO、西側とはすなわちドイツのことであり、反ドイツのことを単純に「反ネオナチ」と表現している可能性がひとつ考えられる。
視点2:正教会の帰属をめぐる問題
もう一つはもっと宗教的な視点だ。第2次世界大戦における独ソ戦のさなか、ウクライナに進軍したナチスドイツは現地のユダヤ人を虐殺する。そして、この虐殺にはキリスト教系のウクライナ人も関わったとされている。このキリスト教徒は、キエフ大公国に起源を持つ正教会の教徒たちだ。
正教会は現在、モスクワのロシア正教会がありつつ、キーウにもウクライナ正教会がある。そしてウクライナ正教会の一部には近年、モスクワ正教会の影響力を排除し、距離を置こうとする傾向があるとされる。ロシア、ウクライナ、ベラルーシの起源といわれるキエフ大公国は、東欧の最初のキリスト教国家(正教会)として成立した国家だ。
故にキーウこそ東方正教会の「聖地」であり、それはモスクワではないと考えるキリスト教徒がウクライナに一定程度いてもおかしくないだろう。
しかし、これはウクライナのEU加盟という政治的な動きとは別に、プーチンを強く刺激する動きには違いないだろう。ソ連は共産主義時代においては当然に無宗教国家だったが、ソ連崩壊以降、高齢者を中心にロシア正教会の信者は増え、正教会の影響力は増しているといわれる。
そうした中で、ロシアとウクライナが「同胞」であり同じ民族であると考えるプーチンにとって、その源流たるキーウの正教会は絶対にロシアの影響下になくてはならないと考えるのは容易に想像がつく。つまり、プーチンがいうところの「ネオナチ」は、ロシア正教会(モスクワ)と距離を置き、独自路線を歩もうとするウクライナ正教会の一部の動きを支持するような人々を指す、という仮説だ。
筆者のこの仮説に基づくなら、プーチンが理解するゼレンスキー大統領は「ネオナチ」に操られた同情すべきユダヤ人であり、EU加盟も自分の信念や意思で動いているわけではない。コメディアン出身で、命じられた演技を脚本通りにそつなくこなす操り人形のような大統領だ。銃で脅せばあっさり国外に亡命して、政権を明け渡すはずの人物である。
IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー
投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。
横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員
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