ロシアのプーチン大統領を支えてきた露民間軍事会社ワグネルグループの反乱が未遂に終わり、組織解体と幹部の海外追放で決着した。権力者の側近軍事組織が正規軍との対立で切り捨てられるのは珍しいことではない。ナチスドイツでも同様の事件が起こっている。
ユダヤ陰謀論を流布したフェイク本「シオン賢者の議定書」に触発され、これを自らの信念の実現に大いに利用できると考えた男が、ドイツ帝国で急速に台頭する。アドルフ・ヒトラーだ。ヒトラーが率いたナチスドイツは「積極的キリスト教」運動を展開する。
今、再び大きな歴史の転換点とも言える出来事が起きている。今回はロシアによるウクライナ侵略戦争について言及する。ウクライナが位置する東欧は、このコラムの主題のひとつである反ユダヤ主義やユダヤ陰謀論の歴史舞台の一つの核ともいえる場所だからだ。
歴史を紐解くと大きな流れの結節点とも呼べる「運命の年」が存在する。日本で「天下分け目」といえば1600年の関ケ原の戦いを思い浮かべるだろう。思想の巨人フランス系ユダヤ人のジャックアタリ氏によれば、スペインにおける「運命の年」は1492年だ。
1347年に欧州に上陸したペストは、ほどなく南欧イベリア半島に到達する。そして欧州各地で繰り広げられた惨劇が、この地でもまた繰り返される。ユダヤ教徒は隔離されたゲットーで生活し、衛生面や食事面でユダヤ教の厳しい戒律(コーシャ)を守っていた。
レコンキスタ(イスラム教徒に奪われたイベリア半島の最征服)が進展すると、キリスト教系王国によってユダヤ人は徴税業務を担わされ、特別目的会社(SPC)のようなビークルを活用した「徴税債権の証券化」スキームを開発した。現代の財政理論にも通じる。
新型コロナウイルス感染症の感染再拡大にもかかわらず政府が東京五輪の開催を決めたことが、「インパール作戦」と揶揄されている。しかし、もっと現在の状況に当てはまる作戦がある。76年前に計画された「オリンピック」と「コロナ」を冠した幻の作戦だ。
イベリア半島諸王国はユダヤ教徒を国王隷属民として管理し、様々な宮廷業務-とりわけ資金調達業務に従事させた。これはユダヤ教徒の金融業としては「ホールセール」にあたる。その内容は単なる融資や貸付とは異なるものだった。それが「徴税請負人」である。
ユダヤ教徒は貿易業などの本業を営みつつ、多角化の一環として金融業を早くから営んでいた。ユダヤ教徒の金融業の発展過程とその背景について書いてみたい。キーワードは「宮廷ユダヤ人」だ。そして舞台はイベリア半島(現在のスペインとポルトガル)である。
一神教と疫病とコーポレートファイナンスの関係を探る連載の3回目。今回は一神教であるユダヤ教の基本理念を解説する。ユダヤ教は「律法主義」「メシア信仰」「選民思想」を重視するが、その真意は意外にも現代の契約社会に通じる合理的で平等な概念だった。