一神教と疫病とコーポレートファイナンスⅨ│間違いだらけのコーポレートガバナンス(23)

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ロシアによるウクライナ侵攻にもユダヤ人問題が…(Photo By Reuters)

ロシア帝国情報機関による史上最悪の偽書「シオン賢者の議定書」

欧州キリスト教世界は、コロンブスの処女航海成功をきっかけに未知の世界に漕ぎ出し、株式会社という仕組みを開発したことで、世界を植民地化し、宗主国と植民地の間で圧倒的な富の格差を固定化することに成功した。

この大航海~植民地支配時代のキリスト教諸国家の輝かしい足跡を歴史の「縦軸」とするならば、ディアスポラのユダヤ教徒の足跡は、キリスト教社会に利用され、翻弄されながらも、生き残りを賭け時にしたたかに生きた、歴史の「横軸」だ。

欧州キリスト教社会の歴史におけるこの「縦軸」と「横軸」の関係。そしてディアスポラの歴史の中で繰り返された物語の起承転結。これは、19世紀に入ってさらに悪化の方向へと向かう。そして、キリスト教国におけるユダヤ教徒の迫害、虐殺、追放が加速していった。迫害と追放の決めゼリフはいつも同じだ。「これは、ユダヤの陰謀である」

欧州キリスト教社会において様々なレパートリーを伴って流布、拡散されたこのフェイクニュース(ユダヤ陰謀論)は、1903年、ロシア帝国情報機関の手により、史上最悪の「フェイクニュース本」として集大成を迎える。1903年、弱体化した帝国に対する民衆の怒りのはけ口をユダヤ教徒に向かわせるため、ロシア諜報部は、ユダヤ陰謀論の集大成を書籍化した。これが、いわゆる「シオン賢者の議定書」である。

今日、プーチン大統領率いる現代ロシアは、ウクライナ侵略戦争におけるフェイクニュースを連発している。あらゆるフェイクニュースを駆使して国民を統制、高揚させ、敵を混乱させる手法は、ロシアが得意とする伝統的な手法だ。中でもこの、シオン賢者の議定書は、東欧におけるユダヤ人大虐殺「ポグロム」を加速させた最悪の偽書だ。政治と戦争において、嘘をフル活用することについて、古来よりロシアは「天才」なのだ。

(この項続く)

文:西澤 龍(イグナイトキャピタルパートナーズ 代表取締役)

西澤 龍 (にしざわ・りゅう)

IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー

投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員

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ignite.info@ignitepartners.jp


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