一神教と疫病とコーポレートファイナンスⅨ│間違いだらけのコーポレートガバナンス(23)

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ロシアによるウクライナ侵攻にもユダヤ人問題が…(Photo By Reuters)

世界で繰り返された、ディアスポラの「起承転結」

ペストの大流行、十字軍的宗教熱の高まりなどで、キリスト教徒の高揚感、社会不安や怒りのはけ口がユダヤ教徒に向かう。そして、各国でユダヤ教徒が国外追放された。時代や規模は前後しても、その構造はこれまで見てきたイベリア半島での出来事とほぼ同じといって良い。

そのような時代の中で、ポーランドのボレスワフ敬虔王(1243-1279)は、1264年にユダヤ人を保護する「カリシュの規約」を発布する。そこでユダヤ人は連帯責任をもって諸侯に税金を納めなくてはならないが、これら諸侯は税金さえ納めればユダヤ人の活動の自由を保証した。

14世紀のカジミエシ三世は、このユダヤ人保護政策をさらに拡大しユダヤ教徒に土地や家屋を取得する権利まで与えた。モンゴル侵入で荒廃したポーランドを立て直すため、ユダヤ教徒のみならず様々な国からの移民を歓迎したのだ。(出所:「物語 ウクライナの歴史」黒川裕次著)

モンゴル襲来後の復興需要を受けて、東欧でユダヤ人の定住が進む(写真はイメージ)

こうして13世紀以降に拡大した東欧でのユダヤ教徒社会の歴史は、これまで見てきたイベリア半島における、キリスト教徒やイスラム教徒との「ギリギリの共存と断裂」の物語と同じだ。その物語には、スファラディがたどった運命と同じ起承転結があった。それは、

最初に、受け入れられて定住し

次に、「専門能力(医学、税務・金融能力、商業、航海技術など)」で貢献し

一方で、同化せず(安息日を守り、ナザレのイエスがキリストであるとは信じない)

やがて、「その活躍や地位、財産、非同化性をキリスト教徒に疎まれて」

最後に、「迫害、虐殺、追放」され

そして、ある者は旅立ち

それでも、ある者は留まる

という物語だ。

西澤 龍 (にしざわ・りゅう)

IGNiTE CAPITAL PARTNERS株式会社 (イグナイトキャピタルパートナーズ株式会社)代表取締役/パートナー

投資ファンド運営会社において、不動産投資ファンド運営業務等を経て、GMDコーポレートファイナンス(現KPMG FAS)に参画。 M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、JAFCO事業投資本部にて、マネジメントバイアウト(MBO)投資業務に従事。投資案件発掘活動、買収・売却や、投資先の株式公開支援に携わる。そののち、IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS 現在IBMに統合)に参画し、事業ポートフォリオ戦略立案、ベンチャー設立支援等、コーポレートファイナンス領域を中心にプロジェクトに参画。2013年にIGNiTE設立。ファイナンシャルアドバイザリー業務に加え、自己資金によるベンチャー投資を推進。

横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業(マクロ経済政策、国際経済論)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員 CMA®、日本ファイナンス学会会員

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