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金融庁が力を入れる”事業性評価”がうまく機能しない理由

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霞が関の街並み

本気で人材を育てるのであれば5年はかかる

事業性を評価するスキルとは

著者が経営するジェミニストラテジーグループでは売上高数兆円クラスの大企業から、数十億円規模の企業まで、数多くの企業で経営者人材育成プログラムを構築、運用している。経営者人材を育成する過程の中で、企業の事業性を評価するスキル、能力、及びその企業に最適なビジネスモデル、戦略を立案するスキル、能力を養う機会もあるが、なかなか一朝一夕には育たない。

企業のBS(貸借対照表)、PL(損益計算書)を見て「財務分析ができる」(数字が読み解ける)というスキルと、その企業の「事業性を見極める」というスキルは全くの別物だからだ。

どう違うのか。例えば、営業利益を売上で割って営業利益率を算出し、収益性を検証する。流動性比率を求めて、他社比較を行い、財務の健全性を検証する…これらは全て数値を机上で計算すれば算出される値である。つまり、解釈に若干の幅はあれど、絶対解(のように見える)一つの数値を導き出すことができる。

一方で、事業性評価はより”ふわっと”している。その企業が生産している製品の競争優位性、販売チャネルの強固さ、マネジメントチーム(経営陣/経営チーム)の強さ等々、人によって見方、評価が変わるものばかり。しかも強み、課題それぞれにおいて大きなインパクトを及ぼす影響因子から、大した影響のない因子まで、パッと見て分からない程、複雑かつ多数の要素が見え隠れする。

結局は一定のフレームワーク(枠組み)に沿って事実を整理し、因果関係を解きほぐしてその会社の業績にインパクトを与えうる強み、弱み(課題)を抽出、特定する必要があるのだ。

それを実現する上での要件としては「ビジネスモデル・戦略の知識(ストック)」「業界・業種に対する理解」「組織・人材に対する目利き」の3つのスキル、能力が必要となる。

これらのスキル、能力をどう身につけ、実践していくか、というのが「事業性評価が出来る人材」を育成出来るか=事業性評価を実践できるかどうか、ということになる。これまでの仕事、キャリアを通じて多くの戦略コンサルタント、経営者を育成してきた著者の経験則から言って「最低でも5年はかかる」と断言出来る。

このように難易度が高い事業性評価に、金融機関はどう対応すれば良いのか。次回は厳しい現実を踏まえた上で、具体策について触れていきたい。(次回に続く)

文:山田政弘/ジェミニ ストラテジー グループ 代表取締役CEO

山田 政弘 (やまだ・まさひろ)

事業投資や戦略立案、経営者派遣やハンズオン(常駐)型経営支援により企業の成長実現・企業価値向上支援を手がけるジェミニ ストラテジー グループ株式会社 代表取締役CEO。

中央三井信託銀行、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)戦略グループ、国内ITベンチャーマーケティングディレクター兼事業開発室長、事業再生コンサルティング会社クライアントパートナー等を経て、全国に店舗を構える靴の製造小売企業株式会社シンコー・株式会社モード・エ・ジャコモの再生担当取締役・事業改革室長としてハンズオンでの経営改革に従事した後、現職。消費財関連のメーカー、小売・流通業やネット企業、外食企業等に対する事業戦略立案、ブランディング、マーケティング支援、製造業に対するR&D戦略等による企業価値向上支援を手がけている。また、ドラッグストアチェーン運営企業やFin tech企業など、複数企業の社外取締役、顧問を務める。

主な著書に『数字を使ってしゃべれるようになるトレーニングブック』(明日香出版)『早わかり 図解&実例 よくわかる!ソーシャル・ネットワーキング』 『エッジ・ワーキング』(ソフトバンククリエイティブ)など。


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