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不祥事を起こした「かんぽ生命」のガバナンス体制について

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4.何が問題だったのか

指名委員会等設置会社は、米国流のガバナンス体制を日本にも導入する趣旨で法制化されました。しかし、同様のガバナンス体制を採用していた米国のエンロンは、サーベンス・オクスレー(SOX)法成立の契機になった巨額粉飾事件を起こしています。エンロンでは、有名大学教授など、CEOのお友達を社外取締役としていたということが問題であったとされました。

指名委員会等設置会社+社外取締役過半数という一見最強に見えるガバナンス体制でも、誰が取締役か、取締役会がどのように運営されているか、が重要な分かれ目になると考えられます。

5.かんぽ生命の社外取締役

かんぽ生命では、上場以来7、8名の社外取締役を置いています。2019年6月の株主総会後は、社内3名、社外7名の体制でした。この社外7名は、どういう人か見てみましょう。

各人の主な経歴をピックアップすると次のとおりです。

・元パソナグループ取締役専務執行役員(女性)
・元アイスタイル代表取締役(女性)
・現ワーク・ライフバランス代表取締役(女性)
・元検事長(現弁護士)
・IHI会長
・現京浜急行代表取締役社長
・元住友商事専務執行役員

経営経験者と法律専門家で構成されています。ダイバーシティ対応として女性3名を選任しています。残念ながら、この中で金融の専門家は一人もいません。

業界のプロであれば、報告内容について合理性がないことに気づく可能性があります。取締役会で話題にならない事項でも、業界の課題を熟知していれば、それに対してどのように対応しているか、取締役会で質問し、追及することもできると思います。

一方、監査委員会のメンバーは次のとおりでした。

監査委員長:元検事長(現弁護士)
監査委員:元パソナグループ取締役専務執行役員(女性)、
元アイスタイル代表取締役(女性)
元住友商事専務執行役員

元検事長が監査委員長になっています。顔ぶれを見ると、法律の専門家はいても監査・会計の専門家は一人もいません。

特別調査委員会による調査報告書によれば、常勤者が1名とされていますが、2018年3月期までは、監査委員会事務局統括役(社内取締役)が常勤でしたが、2019年3月期は全員が社外取締役であり、常勤はいなかったと考えられます。

監査委員会がリーダーシップを取って監査を実施していたのではなく、監査委員会事務局や内部監査部門に「お任せ」になっていた可能性が高いと思います。このため、「大きな問題ではない、すでに解決策を取っている」という報告に納得していたのだと思います。

かんぽ生命は、社外取締役が過半数であっても、ガバナンス強化の役に立っていなかったという事例になってしまいました。社外監査役の「実効性」が非常に重要です。差し障りのない形だけの社外取締役を人選していたのでは、会社のためにはならないだけでなく、大きな損害を招くことになってしまうことが、この事例からよく分かります。

文:久保 惠一(公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー( vol.112 2020.3.12 )より転載

久保 惠一

学歴:1976年 大阪大学経済学部卒業

職歴:大学在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツに入社。カナダバンクーバーの提携先会計事務所で実務経験。大手メーカーや銀行などの会計監査と株式上場支援を経験。監査法人内でリスクコンサルティング事業を立ち上げ、15名から450名の組織に拡大した。 監査法人トーマツのボードメンバー、デロイトトーマツリスクサービス株式会社代表取締役社長、トーマツ企業リスク研究所所長、情報テクノロジー本部長を歴任。石油公団資産評価・整理検討小委員会、東京電力点検記録等不正の調査過程に関する評価委員会、総合資源エネルギー調査会石油部会、原子力施設安全情報申告調査委員会などの政府委員会に参加。大手信販会社総会屋利益供与事件、信用情報機関の個人情報漏洩事件、東京2020オリンピック・パラリンピック招致に関わる海外支払の調査に関与。 元中央大学大学院客員教授

資格:•公認会計士•カナダ(ブリティッシュコロンビア州)勅許会計士

主な著書:•『東芝事件総決算』(単著、日本経済新聞社)•『水リスク−大不足時代を勝ち抜く企業戦略』(編著、日本経済新聞出版社)•『リスクインテリジェンス・カンパニー』(編著、日本経済新聞社)•『内部統制報告実務詳解』(編著、商事法務)


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