HVやEVの普及促進で忘れてはいけないのは、それで生業を奪われる者たちのことだ。その代表格といえるのがガソリンスタンド。東京都内のガソリンスタンド軒数は1999年3月末の2513軒から2020年3月末には999軒と6割も減り、1000軒の大台を割り込んだ。これはHVの普及やガソリン車の燃費向上でガソリン消費が落ち込んだため。
「ガソリンスタンドが消える」というと地方の過疎地のことと考えがちだが、東京は土地の賃借料や人件費が高いためガソリン販売が低迷すると経営が厳しくなる。ガソリンスタンドへの財務支援など、経営を支える政策も必要になる。
とりわけHVを残すという中途半端な政策が、事態をややこしくする。EVへの全面移行ならば、ガソリンスタンドを急速充電スタンドに転換すれば良い。しかし、ガソリンを燃料とするHVを残すとなると、ガソリンスタンドは必須だ。
一方、HV販売が増えればますますガソリン消費が減少し、ガソリンスタンド数の減少に歯止めがかからない。そうなるとHVユーザーはただでさえ渋滞が多い中、遠方のガソリンスタンドまで給油に出かけなくてはいけなくなる。
「市場原理に任せる」という手もあるが、住民から「ガソリンスタンドをバランス良く配置してほしい」と強く要望されれば、都としても動かざるをえないだろう。採算がとれない場所でガソリンスタンドを維持するには、やはり損失補填(ほてん)のための補助金などの財務支援策が必須となる。
いずれにせよ、都としても「言いっぱなし」のパフォーマンスでなく、ガソリン車販売廃止に向けた手厚い支援が必要になる。都にそれだけの「覚悟」があるのかどうかが問われることになりそうだ。
文:M&A Online編集部
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