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「コロナ破たん」に惑わされるな=2021年を振り返って

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公開日付:2021.12.22

 倒産取材の現場では、「新型コロナが影響した」とのセリフをよく聞いた。関係者へのヒアリングでは「枕詞」と化し、破産や民事再生の申立書でも常套句として使われた。だが、それに慣れると本当の原因を見誤る。

 2020年4月、ステーキ店を運営する(株)あさくま(TSR企業コード:400359235、JASDAQ)の子会社で、日本料理店の(株)竹若(TSR企業コード:292657242)が取引先に債権放棄を求めた。竹若は、あさくまがコロナ感染拡大の直前、2020年2月に子会社化したばかりだった。それから1年後にあさくまは「のれん減損」の計上を余儀なくされた。

 今年4月、竹若は債権者に休眠を通告した。しかし、「債権者集会」の質疑応答でリース会社が自社のリース物件の所在を尋ねると、竹若は「ダブルリースやオーバーリースなどの多重リースがあった」と明かし、会議は紛糾した。結局、竹若は8月末に東京地裁に破産を申請することになった。「破産申立書」では、「新型コロナウイルスの感染が広がり、売上に影響が出はじめ…」、「新型コロナウイルスの拡大に伴う緊急事態宣言が出され、飲食業界は大きなダメージを受け…」など、コロナに責任転嫁するような文言が並んだ。多重リースは、あさくまの買収前だったが、資産査定(デューデリジェンス)の内容を問う声も上がった。ましてや上場企業によるM&Aは、買収する方もされる方も信用に大きく影響する。コロナ禍だけが破たんの原因ではないだろう。

 9月に東京地裁から民事再生開始決定を受けた広島県の(社福)サンフェニックス(TSR企業コード:722070942)も波紋を広げた。介護施設などを広島県や東京都内などで展開していたサンフェニックスを、公認会計士の理事長(当時)が2016年4月に買収した。だが、買収後に法人の資金約30億円が社外に流出した。関係者はコロナ禍で入居率が低迷し、業績も悪化していたと語った。ところが取材を進めると、理事長が経営、または実質的に支配する数十社でグループを形成し、以前からグループ内で資金を循環させていた。買収されたサンフェニックスも、買収と同時にグループに組み込まれていたわけだ。すでにサンフェニックス以外にも複数の関係先が破たんしているが、次にどこが破たんするか、まだ予断を許さない。

 サンフェニックスの問題では、与信担当者が頭を抱えた。理事長が実質的に支配していた企業を把握できなかったからだ。役員は商業登記で確認できるが、株主など役員以外の人物が会社に影響力を持つと、一般的な審査では実態がみえなくなる。

 2022年1月末から実質的支配者を登録できる制度が始まる。2022年からの与信管理は、国内企業でも実質的支配者(BO)の把握が不可欠になる。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年12月22日号掲載「2021年を振り返って(前編)」を再編集)

東京商工リサーチ「データを読む」より抜粋

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