もはや利益を稼げる商品ではないのか

 レノボがIBMのパソコン部門の買収で投じた金額は総額で12億5,000万ドルといわれている。そして、レノボはHP、デルに次ぐ世界第3位のパソコンメーカーに躍り出た。レノボはIBMに優先的にPCを供給し、『ThinkPad』のブランドも含めたIBMのブランドを5年間は使用できることになった。

 しかし、世界第3位のパソコンメーカーの誕生といっても、2005年当時は冷ややかな声もあったようだ。この代表例が「もはやパソコンは利益を稼げる商品ではない」という声だ。

 しかし現実には、レノボは現在も快進撃を続けている。たび重なるM&Aを原動力に売上を伸ばし、PCの出荷台数ではいまやグローバルではトップの座を獲得するまでになっている(2016年)。いまも、HP、デル、レノボの3強体制で業界を牽引している。

グローバルを棲み分ける多様性

 レノボの戦略の背景にあるのは、「多様性をもった地域性を活かした姿だ」という指摘がある。ひょっとしたら、そこには、今日、カメラ市場のライカやハッセルブラッドなどのような高度な趣味性も加わっているのかもしれない。

 その市場では、製品を標準化することによってコストダウンを推し進めることに限界が訪れ、メーカー各社が次の一手を打ち始めたということだろうか。そう捉えると、成熟市場において新たな戦略を打ち出すメーカーの姿も見えてくる。

 レノボの製品群を概観するとき、汎用性のある普及品のレノボと製品の設計から販売までビジネスユースに特化した『ThinkPad』により、その多様性の両翼を押さえてきたようにも思える。

 M&Aの観点からいえば、IBMとレノボという海外企業が反発しあうことなく互いの強みを発揮するということだ。もちろん、どんな海外M&Aでも、統合に向けたグローバルでの意見調整には、大きな苦労があったはずだ。しかし、それを乗り越えてこそのM&Aである。

 現在、レノボのノートパソコンは大きく二つの系統に分かれる。『ThinkPad』のロゴがついてるパソコンと、ついていないパソコンである。『ThinkPad』のロゴがついていないレノボのノートパソコンは、基本的に中国で開発され、コストパフォーマンスに優れたモデルが中心である。

 いささか人間臭い話になるが、両者は開発拠点も異なれば、歴史も異なる。ターゲット層によって競争モデルの棲み分けを行っているということだろう。

 ある大手家電量販店の売場担当者は、『ThinkPad』について次のように語っていた。「レノボさんは完全に販売も棲み分けてますからね。『ThinkPad』はウチの店頭では扱っていません。個人でご入用でしたら、ネットショップをあたっていただくか、中古専門店にでも行っていただかないと。中古専門店なら、たまに大手企業からの大量の“払い下げ”があるんですよ」

 シリーズの開発は続き、2015年にシリーズ累計1億台を出荷した『ThinkPad』。今後もビジネスマンの“スグレモノの逸品”という位置づけは受け継がれていくだろう。

文:M&A Online編集部