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ピーチ、ANA子会社化の衝撃(3)カギ握る親会社との「距離感」 経営の自主性保てるか

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空から見た関西国際空港

議決権の3分の2獲得、ANA主導強まる

 翻ってピーチではどうか。今回の資本移動で、ANAの出資比率は38.67%から67%に高まる。議決権の3分の2以上を所有することによって、株主総会での特別決議の議案を単独で通せるようになる。役員の選任など経営の重要事項もANAの意向を反映した要素が強くなる。

 反対に外部の投資家比率は33%に低下する。24日の記者会見には、ピーチの創業期からの株主である官民ファンドの産業革新機構と香港の投資家であるファーストイースタンの姿はなかった。実際の株式譲渡は4月だが、すでにANA主導が色濃くなった印象を受ける。

 とはいえ、外部の投資家の持ち分はなお33%残る。彼らが株主として影響力を行使するうちは、ANAもピーチの現経営陣の自主性を尊重した経営を行うのではないだろうか。航空業界には「大手航空会社のLCC子会社は成功しない」との通説がある。LCCにとっては常識にとらわれず、新たな取り組みでコストを下げられるかが重要だからだ。

 ピーチは井上慎一最高経営責任者(CEO)のリーダーシップの下で、従業員から様々なアイデアを吸い上げ、新たな挑戦をしてきたことが今日の躍進につながっている。ピーチは創業期から親会社の出資比率を3分の1に抑えたことや、本社が大阪で、地理的にもANAの本社がある東京と離れているという、適度な距離感があったことが、経営の自主性を支えていたと考えられる。

完全子会社化か上場か、命運握る残りの33%

 そんな中でもANAの子会社になるのは、今後の事業拡大をにらんでのことに違いない。ピーチは現在18機を運航するが、2020年までに35機、将来的には100機体制とすることを視野に入れている。実現には多額の資金調達に加えて、整備体制の拡充やパイロットの養成も必要。ANAと連携できることにメリットはあるのだろう。

国内LCC各社の機材計画

航空会社(LCC) 現在 将来 時期
ピーチ・アビエーション 18機 35機 2020年
バニラ・エア 8機 25機 2020年度末
ジェットスター 20機 28機 2019年までに

各社の開示資料、各種報道を元にM&A Online編集部作成

 ピーチ株の残りの33%を将来、投資家が売却するときに、ANAが全部を買い取って完全子会社化にするのか、それとも、新規株式公開IPO)するなどして、外部の資本を入れてさらなる成長をめざすのか。いずれにせよ、個社の利益のみならず、日本の航空業界の発展や利用者の便益につながるかという観点で今後もピーチを支えていってほしい。

文:M&A Online編集部

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ピーチ・アビエーションは国内の格安航空会社(LCC)の中で屈指の好業績を収めている。一方、ANAホールディングスは100%出資のLCC子会社のバニラ・エアを抱える。ANAによる子会社化で「兄弟関係」がどう変化するかも焦点だ。