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大学発ベンチャーの「起源」(4) オンコセラピー・サイエンス

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分子標的薬の「ターゲット」を探せ!

その一つが「TOPK阻害剤」。分子標的治療薬を開発するには、そもそもどこが「がん細胞化」するのかというターゲットを同定しなくてはいけない。「TOPK(T-LAK cell-originated protein kinase)」は、中村氏が東大医科学研究所時代に、ゲノム包括的遺伝子解析によって同定された物質だ。

TOPKは乳がんや肺がんはじめ多くのがん種で発現が非常に高い一方で、正常な組織ではほとんど発現しない。TOPKに作用する薬剤であれば、多くのがん腫の治療に効果を発揮すると同時に副作用のリスクが非常に低いという。

多くのがんでTOPKの発現率は極めて高い(同社ホームページより)

同社はこのTOPKに対してのみ高い攻撃力を持つ「OTS964」などの低分子化合物を開発。様々ながん細胞を死滅させることや、人間の肺がん由来の細胞を利用したマウス実験で顕著に腫瘍の増殖を抑制する効果が明らかになった。

特に細胞の約1/100ほどの超微小なリポソーム製剤として静脈内に投与した場合、マウスに移植したヒトの腫瘍が完全に消失したという。同社ではこうした実験データを積み上げ、実用化に向けた臨床試験を進めている。

併せて中村氏によるゲノム包括的解析で発見した「FZD10」を標的とする「OTSA101 」も開発。「FZD10」と容易に結びつく「OTSA101」に放射性同位元素を結合しておくことで、放射線による強力な抗腫瘍効果を発揮することが動物実験で明らかになった。

オンコセラピー・サイエンスの創薬技術により、がんは外科手術ではなく「薬で治す」時代になるかもしれない。日本人のおよそ半分はがんで亡くなる。それだけにがん治療薬の市場は大きい。もちろん海外での重要も極めて高く、わが国経済を支える新たなビジネスに育ちそうだ。

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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