上記1.2.の決議を行った場合、管轄法務局に対して、その旨の変更登記申請をする必要があります。
これまでは、株主総会の決議内容を証する書面として、株主総会議事録を添付すれば足り、実際に株主総会がきちんと行われたかどうか・株主の出席があったかどうかについて、証明する書類の提出は不要でした。
しかし、平成28年10月1日付で、商業登記規則が改正され、株主リストの添付も必要になりました。
具体的には、定款変更・役員変更など、株主総会議事録の添付が必要な登記を申請する場合、議決権比率が高い順に上位株主10名又は合計で総株主の議決権の3分の2に達するまでの上位株主のいずれか少ない方の株主情報(氏名又は法人名・住所・持株数・議決権数・議決権割合)を記載した株主リストを提出する必要があります(改正後商業登記規則61条3項)。
上場前の企業であれば、株主である社長だけで総株主の議決権の3分の2の要件を満たすケースも少なく無いかもしれませんが、ベンチャーキャピタルが多数入っており、社長の持株比率が低い企業の場合には、上記要件を満たすために、多数の株主情報を記載した株主リストを作成する必要があります。
株主総会の開催方法などに変更があったわけではないので、実務上の影響はそう大きく無いかもしれませんが、今まで不要だった書類が追加されたので、その分手間が増えることになります。
また、本事例のように、10月1日前に行った株主総会であっても、登記申請が10月1日以降の場合には、本改正の適用がありますので、ご注意ください。本事例のように9月下旬に株主総会を行った場合の変更登記申請は、10月1日以降になされることが少なくありませんので、本改正の適用があると考えた方がいいでしょう。
他方で、ベンチャー企業や上場企業の子会社では活用事例が多いと思いますが、株主全員の同意を得て書面決議(会社法319条)で株主総会を行った場合も、株主全員の株主情報を記載した株主リストの提出は不要であり、議案自体の決議要件(会社法309条)に従った株主リストを提出すれば足ります(改正後商業登記規則61条3項)。
以 上
文:司法書士/行政書士 大越一毅
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