企業のM&Aのトラブルはどのようなものがあるのだろうか。M&Aが成立する前の最大のトラブルは「M&Aが成立しないこと」だとM&A実務の専門家は話す。
その中でもよくあるのが、「経営陣の中にM&Aの反対者がいること」なのだと言う。そうなると、反対者はM&Aを成立させないための手を打ってくる。
極端なケースはM&Aを進める経営者をクビにするというものであろう。2013年の川崎重工業<7012>の騒動はまさにこの例だ。
当時代表取締役社長だった長谷川聡氏が三井造船とM&Aの交渉を進めていたが、それに反対するほかの経営陣が取締役会で同氏を電撃解任、交渉を白紙に戻す。M&Aを阻止するため、取締役会が社長を突然クビにするという事態となり、世間を驚かせた。
故意はなくても情報が漏れることはトラブルの元だ。一般従業員にM&Aの情報が漏れると、社内の混乱は避けられない。買われる方の企業では不安に思った従業員が転職をしようという動きが出てしまうかもしれない。だからこそ、M&Aの交渉中もっとも気を付けるべきことは「とにかく情報を外に漏らさないこと」(同・専門家)なのだと言う。
また、M&Aの進行中に行うデューデリジェンスで、売り手が隠していた欠点や不正が発覚した、というのもよくあるトラブルだという。例えば、土壌汚染によって土地が利用できない状態であったり、機器が古くなって使用できなかったというケースなどだ。
そうなると、売り手は買って欲しい、買い手は買えないという主張が平行線をたどり、M&Aが不成立となってしまう。「買い手は、投じた資金を回収しなければならず、M&A成立後のトラブルリスクも負うため、慎重になって当然」(同・専門家)なのだと言う。
売り手側が買い手側に対して真剣に情報開示をした上で、経営陣が交渉状態を外に漏らさず、かつ一丸となって取り組む姿勢があって初めてM&A成立のスタート地点に立てるといえそうだ。
文:M&A Online編集部
※本回答は編集部がM&Aの実務家への取材によりまとめたものです。
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