最も悲惨な「つまみぐい」を回避せよ!

ルノーの大株主であるフランス政府の狙いが同国での投資と雇用だとすれば、日産の業績が長期安定するとは考えにくく、結局は「つまみ食い」になる。「つまみ食い」をされないためには、ルノーと一体化するしかない。

ルノーの一部となれば、自社の業績の足を確実に引っ張るフランス国内での増産には踏み切れないだろう。フランス政府としても、国内大手自動車メーカーであるルノーの業績不振は避けたい。結果として日産の懸念するフランスでの大型投資はなくなる。

事実上、日産は消滅することになるが、売上高はもちろん技術開発力、生産技術力ともにルノーよりも上。ルノーのCEOに日産出身者が就任する可能性もないわけではない。いわば「肉を切らせて骨を断つ」戦略だ。いずれにせよ、現状のままの資本関係や持株会社の下で事業会社として独立を保つ状況では、日産の将来は危ういものになるだろう。

もちろんルノーも本音では吸収合併は避けたいだろうが、それしか日産がスムーズに手に入らないとなれば受けいれざるを得ない。ルノーとしても連結利益の半分が、日産から得られる持ち分法投資利益なのだ。今さら関係解消はできない。

現時点で日産が目指しているのは「今まで通り3社連合のおいしいところは維持して、自社の独立性を保ちたい」というものだが、「甘い」としか言いようがない。仮に日産の思惑通りに交渉が妥結すれば、3社連合の先行きはむしろ暗くなる。

「船頭多くして船山に上る」の例えもあるが、電気自動車(EV)への移行や自動運転の導入といった業界の大変革期を、合議で乗り切れるほど甘くない。強力なリーダーシップの下、迅速な経営判断と実行力が生き残りを左右する。そのためにはリーダーは1人の方がよい。企業経営は政治とは違うのだ。

すでに日産もルノーと決別して生き残るのは難しい段階に入っている。日産が自ら主導権をとって経営したいのであれば、もっと早い段階で立ち上がるべきだった。今となっては日産が生き残るには何が必要なのかを冷静に見極める必要がある。日産には目先の「平等」や「独立」という耳障りのよいスローガンで判断を誤ることがないよう祈りたい。

日産の西川廣人社長はルノーとの交渉で何を得ようとしているのか?(同社ホームページより)

文:M&A Online編集部