映画『コンテイジョン』は落ち着いた対応こそ必要と説く

新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大する中、スティーブン・ソダーバーグ監督の映画『コンテイジョン』(2011年)が注目を集めている。未知のウイルスによる感染症がアメリカで発生し、蔓延していくストーリーで、公開当時のキャッチコピーは「【恐怖】は、ウイルスより早く感染する」だった。

コンテイジョンのあらすじ

ミッチ(マット・デイモン)の妻ベス(グウィネス・パルトロウ)は香港出張から帰国するとすぐに体調を崩し、2日後に亡くなる。同じ頃、香港では青年が、ロンドンではウクライナ人モデルが、東京ではバスに乗っていたビジネスマンがそれぞれ突然倒れて亡くなった。新型ウイルスが発生し、驚異的な速度で全世界に拡散する。

米国疾病対策センター(CDC)を統括するエリス・チーヴァー(ローレンス・フィッシュバーン)が、調査のためにエリン・ミアーズ(ケイト・ウィンスレット)をミネアポリスに送り込む。世界保健機関(WHO)のレオノーラ・オランテス(マリオン・コティヤール)も香港に渡り、ウイルスの感染源を突き止めようとする。

しかし、人気ブロガーのアラン(ジュード・ロウ)が「政府は事態の真相とワクチンを隠している」とブログで主張し、人々の恐怖を煽った。その恐怖はウイルスより急速に広がり、人々はパニックに陥り、社会は崩壊していく。国家が、医師が、そして家族を守るごく普通の人々が選んだ決断とは?

10年後のコロナ災禍を予見したかのようなストーリー

熱っぽい顔をした人物が登場し、次々と不審な死を遂げていくサスペンスタッチな展開で始まる。彼らが公共交通機関の手すりやドアの取っ手、エレベーターのボタンなどに触れるシーンをアップで映し、緊張感が高まっていく。本作のタイトル「コンテイジョン(contagion)」は病気の接触伝染を意味するのだが、知らぬ間にウイルスが蔓延していく恐怖が伝わってくる。

彼らの死因が感染症だと判明すると、CDCやWHOの博士たちはウイルスの解明やワクチン開発のために奔走する。CDCのミアーズは感染症について説明する際、こう語っている。「感染はおそらく呼吸器系や媒介物から」、「ドアノブ、水飲み器、エレベーター、人の手などが媒介物」、「人間は普通、1日に2000~3000回、顔を触る」。今後の対応を議論する中、学校閉鎖案が出ると「誰が子どもの面倒を見るの?」という声が上がった。10年後に起きることとなる新型コロナウイルスの災禍を予見したかのようである。

極限状態に陥った人間が情報に振り回される

ウイルス感染の不安で極限状態に陥った人々が、スーパーで争うように食料品や日用品を買い占める。人気ブロガーのアランが怪しげなものを特効薬として勧めると、鵜呑みにした多くの人がそれを求めて薬局に列をなす。映し出される人々はトイレットペーパーを求めてドラッグストアに殺到した日本人と重なる。

パニックが起こるとしたら、その元凶はウイルスではなく人々の恐怖心ではないか。ウイルス感染の恐怖を描きつつ、非常時こそ落ち着いた対応が必要とのメッセージが本作から伝わってくる。新型コロナウイルスの収束の目途が立たない今こそ、じっくり観たい作品である。

コンテイジョン

<作品データ>
『コンテイジョン』/Contagion
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
出演:マット・デイモン、ジュード・ロウ、ローレンス・フィッシュバーン、マリオン・コティヤール 、ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロウ、ブライアン・クランストン 、ジェニファー・イーリー 、サナ・レイサン
2011年 アメリカ
©2011 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

文:堀木 三紀