金融業界の過酷さと人間模様を描く 映画『ディーラーズ(1989年)』

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大損失を出したディーラーが自殺した銀行を舞台に描かれる金融業界の過酷さと人間模様を描くビジネスドラマ。凄腕だが向こう見ずな若きディーラーをポール・マッギャン、美人凄腕ディーラーをレベッカ・デモーネイが熱演する。

映画「ディーラーズ」のあらすじ

ホイットニー・ペイン銀行ロンドン支店で、1億ドルの損害を出したドル担当のディーラーが行内の役員室で拳銃自殺を図った。行内での事件にショックを受けるなか、メリルリンチ証券からヘッドハンティングされた女性ディーラーのアンナ(レベッカ・デモーネイ)が新たなドル担当として入行。ドル担当の座を狙っていた6年目のディーラー・ダニエル(ポール・マッギャン)は、大いに不満を抱える。

上からの命令により、取引室長に就任したアンナとタッグを組むことになったダニエルは、衝突を繰り返しながらもお互いに惹かれ合うようになり、いつしか恋仲に。強力なタッグを組んで1億ドルの損失から復活する兆しが見えるも、ダニエルが行ったある取引が、銀行を再び危機に陥れてしまう。


(以下、ネタバレを含みます)

残酷な人間関係の中で光るダニエルの人情味

同僚が拳銃自殺をした当日に後釜となるアンナが入行し、悲しみに浸る間もなく損失を取り戻すことだけを考えるディーラーの世界。仕事中心のダニエルは恋人に逃げられてしまう。

そんなある日、銀行を首になった元上司のロビー(デリック・オコナー)と偶然再会し、行く当てのないロビーを自宅に招くダニエル。ロビーがレストランを経営したいと夢を口にした際も融資を申し出たダニエルからは、殺伐とした人間関係が描かれる中で一服の清涼剤のように暖かい人情味を感じられる。

敏腕ディーラーを演じるレベッカ・デモーネイの妖艶な魅力

ドル取引担当の後釜として、次々に手柄を立てていく謎の美人ディーラー・アンナを演じるのはトム・クルーズの初主演作「卒業白書」でトムのパートナーを演じたレベッカ・デモーネイ。

上司の愛人という裏の顔を持ちながら、徐々にダニエルに心を開いていく若い女性としての恋心を熱演。仕事と恋を両立させる女性を演じきったその妖艶な魅力に脱帽せざるを得ない。

やや唐突な展開が残念

息が合ってきたダニエルとアンナの協力により、1億ドルの損失穴埋めに目途がついたころ、ダニエルはロビーに勧められた長期米ドル債を密かに買い進める。無断で行った買い付けに気付いた上司に止められるも、アメリカのGNP発表と同時に必ず上がると信じるダニエル。

結果として相場は反発、ダニエルは勝負に勝って幕が閉じるが、「ディーラーとしての勘」に銀行の運命を懸けた展開にやや雑な印象も。もう少し丁寧にストーリーが描かれればなお良かった。

<作品データ>
原題:Dealers/邦題:ディーラーズ
1989年・イギリス(1時間27分)

ディーラーズ


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