クライムアクションサスペンス『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』が2月7日(金)から全国公開された。贋札(がんさつ。にせさつとも言う)とは、偽造紙幣のこと。主演はチョウ・ユンファとアーロン・クォック。『インファナル・アフェア』シリーズの脚本家として知られるフェリックス・チョンがメガホンをとった。
本作は、香港と中国でメガヒットとなり、第38回香港電影金像奨(香港アカデミー賞)で最多となる計17部門にノミネートされ、最優秀作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞・編集賞・美術デザイン・衣装デザインの計7部門を受賞。既に韓国でのリメイクが決定している。
タイの刑務所から香港警察に身柄を引き渡されたレイ・マン(アーロン・クォック)は世界を震撼させた国際的偽札製造集団のメンバーだった。4つの事件に関する容疑で取り調べを受けるが、そこにレイの友人を名乗る国宝級の女性画家ユン・マン(チャン・ジンチュー)が現れる。
レイの保釈を求める彼女に対し、捜査の指揮を執るホー警部補(キャサリン・チャウ)は今も行方不明となっているチームの首領である“画家”(チョウ・ユンファ)について話すことを要求。レイは冷酷無比な“画家”の報復に怯えながらも自身の過去を語り始める。
舞台は1990年代のカナダへ。貧しい画家だったレイは当時恋人だったユンとの将来に希望を託すも、なかなか芽が出ない。生計を立てるためにこっそりと絵画の偽造に着手すると、自らを“画家”と名乗る男に贋作の腕を認められ、彼が運営する偽札組織にスカウトされる。
数奇な物語がレイの口から語られたとき、“画家”がふたたび姿を現し、衝撃の真実が明らかになる。
日本ではジョン・ウー監督の傑作『男たちの挽歌』で有名なチョウ・ユンファ。本作でもベレッタM92Fを両手に持って撃ちまくる。代名詞でもある“二丁拳銃”姿は、1980年代の香港映画の黄金期を再現するかのよう。本格的なガン・アクションに歓喜するファンが多かったのか、香港では2018年度年間興行収入2位となり、中国大陸で公開された香港映画としては、史上最高額となる12億元(200億円超)を記録した。
日本では2018年の東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門で上映されたが、チケットはすぐに完売。チョウ・ユンファ、そして“舞王(ダンス王)”の異名を持ち、アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、レオン・ライとともに“香港四大天王”と呼ばれるアーロン・クォックの人気のほどがうかがえる。
以下、ネタバレを含みます
脚本家からスタートしたフェリックス・チョン監督は本作でも脚本を書いている。幼いころから横溝正史や松本清張の推理小説が好きだったという同監督の脚本はミステリー色が強い。張り巡らされた伏線はラストで一気に集約され、観客はミスディレクションされていたことに気づく。
結末を知ってもう一度見ると、登場人物の些細な行動やひとことに別の意味があったことがわかる。その瞬間、クライムアクションサスペンスだと思っていた本作が違うものに見えてくるだろう。逃亡したレイと行動を共にしたシウチン(ジョイス・フォン)、愛する人を偽札製造チームに殺されたホー警部補の哀しい恋愛物語でもあったのだ。
物語の前半は1996年に発行されたアメリカの最高額紙幣である100ドル札の偽造に成功するまでの試行錯誤を描いており、綿密なリサーチを行ったことがうかがえる。
例えば、紙幣に入っている透かしは紙の繊維で形成するため、製紙過程で作り出す。しかし、100ドル札に使われる無酸紙はアメリカ政府が管理しているため入手は難しい。その難題を絵画の贋作に関するエピソードなどをヒントにクリアした。
ほかにも、「偽札検出ペンは普通紙に書くと紫色だが、無酸紙では黄色に変わる」、「紙幣の印刷は凸版印刷機ではなく、凹版印刷機で行う」など、危ない専門知識が満載である。偽札作りは完璧に複写する芸術家の技量だけでなく、化学の知識も求められるようだ。
文:堀木三紀(映画ライター/日本映画ペンクラブ会員)
<作品データ>
『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』
監督:フェリックス・チョン(『インファナル・アフェア』シリーズ脚本)
出演:チョウ・ユンファ(『男たちの挽歌』、『アンナと王様』、『グリーン・デスティニー』)、 アーロン・クォック(『風雲 ストームライダーズ』、『アンナ・マデリーナ』、『コールド・ウォー』、チャン・ジンチュー(『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』)
2018年/香港・中国/広東語、北京語/カラー/130分/PG-12
配給:東映ビデオ
©2018 Bona Entertainment Company Limited
2月7日(金)の新宿武蔵野館などを皮切りに全国順次公開
公式サイト:http://www.gansatsuou.com/
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