閉ざされたバンカー(地下要塞)で繰り広げられる極秘ミッションが、度重なる想定外の誤算に見舞われて混乱し、ついに世界レベルの戦争へと発展していく。『PMC:ザ・バンカー』は緊迫感あふれる映像をふんだんに使った戦闘シーンを本線に、2024年のアメリカ大統領選挙をめぐる謀略を絡めた一大サバイバル・アクション作品である。

 

<あらすじ>

韓国特殊部隊の元兵士エイハブ(ハ・ジョンウ)は民間軍事会社(Private Military Company=PMC)「ブラックリザード」の傭兵で、作戦成功率100%とCIAから絶大な信頼を受けていた。今回のミッションは韓国と北朝鮮の軍事境界線の地下30メートルに広がる秘密の地下要塞(バンカー)で捕らえた北朝鮮要人を安全な場所への護送すること。しかし、CIAの密かな策謀や仲間の裏切り、国家間の政治的な駆け引きによって孤立し、バンカー内で絶体絶命の窮地に陥る。

暗殺者の汚名を着せられたエイハブが死地を脱する唯一の道は、迫りくる敵の包囲網を突破し、捕獲した北朝鮮最高指導者“キング”を地上へと連れ出すこと。北朝鮮のエリート医師ユン(イ・ソンギュン)の協力を得たエイハブは、瀕死の重傷を負ったキングの蘇生に成功するが、すでに八方塞がりの彼らの行く手にはさらなる過酷な運命が待っていた。

<見どころ>以下、ネタバレを含みます

斬新なアイデアと世界情勢が結びついた脚本

韓国と北朝鮮の軍事境界線は非武装地帯 (DMZ)とされているが、その地下30メートルに巨大なバンカーが広がっていたとしたら?ーキム・ビョンウ監督はこの斬新なアイデアに、アメリカ大統領選挙を結び付けた。

作品の舞台は2024年大統領選挙当日。支持率が低迷するアメリカ大統領を再選させたい政府スタッフが策略を巡らし、北朝鮮の要人を拉致して北朝鮮の非核化を進めることで支持率のアップを図る。ところが、そこに中国が介入。北朝鮮の後ろ盾となって、世界経済の覇権を握ろうとする。

アメリカと中国、北朝鮮、それぞれの国の思惑が交錯し、状況はめまぐるしく変化する。傭兵を手駒としか考えない政府。刻一刻と悪化する状況下で生き抜くには、瞬時に対応を判断しなくてはならない。

二転三転し緊張感あふれるストーリー展開は、デビュー作『テロ, ライブ』で爆弾テロ事件をリアルタイム形式で描き、韓国の映画賞の新人監督賞を総ナメにしたキム・ビョンウ監督だからこそ。バンカーという閉ざされた空間で息遣いまで聞こえるほど密着し、ミッションを決行する傭兵たちの決死の行動を映し出している。 

最新の機材を駆使してリアルな体感的映像を

本作の大きな特徴として、POVカメラ、球状の偵察カメラを使ったシーンの多用が挙げられる。POVは「Point of View」の略で、映像業界では登場人物の視線とカメラの視線を一致させたカメラワークをPOV方式と呼ぶ。

劇中に登場する傭兵たちのヘルメットにPOVカメラを装着して彼らの視点での現場を映し出し、球状偵察カメラは壁面さえも転がり上り銃撃戦の生々しさを捉える。観客は実際に体験しているかのようなスリルと臨場感を得られるのだ。

さらに本作では、ハリウッドでも多用されている「プリビズシステム」を採用した。本格的な制作に入る前に、完成した状態の映像イメージをコンピューター上で作り上げるもので、絵コンテよりもイメージを共有しやすい。撮影前に何度もシミュレーションと修正の作業を行うことで撮影のテイクが減って俳優たちの体力的負担も軽くなり、集中力を途切れさせずにアクションシーンに臨めたという。

韓国映画界きっての演技派俳優2人が共演

陰謀渦巻くバンカー内で生き残りをかけ、韓国と北朝鮮の国境を越えてエイハブとユンが信頼関係を築いていく。演じるのは韓国映画界きってのアクション俳優と演技派俳優の2大スターだ。

傭兵のエイハブを演じたハ・ジョンウは、キム・ビョンウ監督とは『テロ,ライブ』以来の再タッグとなった。役作りのために1カ月間アメリカに滞在。スラング混じりの英語を習得して、半分以上英語のセリフに挑んだ。演技に定評のあるハ・ジョンウが前作『神と共に』シリーズでスタイリッシュなアクションを披露したが、本作では演技派に徹した。傭兵部隊のリーダーとして生死を分ける選択を何度も迫られ、苦渋に満ちた表情が印象に残る。

ⓒ 2018 CJ ENM CORPORATION, PERFECT STORM FILM ALL RIGHTS RESERVED

医師のユンを演じたイ・ソンギュンは本国では演技派俳優として知られており、第92回アカデミー賞で作品賞ほか4部門受賞した話題作『パラサイト 半地下の家族』ではIT企業の社長に扮している。

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北朝鮮最高指導者の専属医師で留学経験がある役を演じるにあたり、北朝鮮出身者の指導を受け、ソウルの標準語が混じった北朝鮮訛りという細かいところまでこだわったという。

命の価値に優劣はあるのか。極限の状況下で何度も決断が求められる。迷いながらも懸命に生き延びようと行動する二人の姿から、戦争を起こすのは人ではなく権力であるという事実を想起せずにはいられない。

文:堀木三紀(映画ライター/日本映画ペンクラブ会員)

 <作品データ>
『PMC:ザ・バンカー』
監督・脚本:キム・ビョンウ
出演:ハ・ジョンウ、イ・ソンギュン
原題:PMC: 더 벙커
日本語字幕:橋本裕充
配給ツイン 
2018年/韓国/125分/ビスタ/5.1chデジタル
ⓒ 2018 CJ ENM CORPORATION, PERFECT STORM FILM ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://pmcthebunker.com/
2020年 2月28日(金)シネマート新宿 ほか全国順次ロードショー