Gucci(グッチ)創業者一族の内紛を映画化『ハウス・オブ・グッチ』

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ⓒ 2021 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.

GUCCI創業者一族の確執とその中で起きた創業者グッチオ・グッチの孫にあたる3代目社長マウリツィオ・グッチ殺害事件を描いた『ハウス・オブ・グッチ』が2022年1月14日(金)に公開される。

2001年にサラ・ゲイ・フォーデンが書いた『The House of Gucci(ハウス・オブ・グッチ)』を原作とし、『エイリアン』や『ブレードランナー』などの名作から、アカデミー賞作品賞を受賞した『グラディエーター』など幅広い作品を世に送り続けるハリウッドの巨匠リドリー・スコットが監督を務める。

グッチ家崩壊を招くパトリツィア・レッジャーニには、世界的なミュージシャンとして唯一無二の存在であり続け、初主演『アリー/スター誕生』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたレディー・ガガ。その夫マウリツィオ・グッチをアダム・ドライバーが演じるほか、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエックなどハリウッドを代表する豪華キャストが勢ぞろいした。

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<あらすじ>

父が営む運送業会社で経理を担当するパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は友人に誘われて出掛けたパーティーで1人の男性と知り合う。彼の名前はマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)。その名前を聞いてピンときたパトリツィアは偶然を装って再会を果たし、積極的にアプローチを掛けた。マウリツィオ本人は弁護士を目指していたが、ファッションブランド“GUCCI”の創業者グッチオ・グッチの孫だったのである。

マウリツィオの父ロドルフォ・グッチ(ジェレミー・アイアンズ)はパトリツィアが財産目的で息子に接近していると怪しみ、結婚に反対するが、世間知らずのマウリツィオはパトリツィアに夢中で、耳を傾けなかった。

ロドルフォの兄で、GUCCI経営のトップに立つアルド・グッチ(アル・パチーノ)は甥の結婚を知り、2人を自身の誕生日パーティーに招く。アルドはパトリツィアを気に入り、2人をNYに招待した。パトリツィアは傾倒し依存する占い師ピーナ(サルマ・ハエック)の助言を受けて、家業を継ぐことに興味のなかったマウリツィオを説得。NYに移り住むと、アルドからブランドの仕事を託されるようになった。

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一方、アルドの息子パオロ(ジャレッド・レト)はGUCCIのイメージとはかけ離れた、新たなデザインを模索するが、父やロドルフォに受け入れてもらえず苦悩していた。やがて病身だったロドルフォが亡くなり、マウリツィオに対して支配的になっていったパトリツィアはパオロに味方するように思わせ、父子の対立を深めさせる。それは2人をGUCCIから追いやっていくための方策だった。しかし、パトリツィアたちも無傷ではいられない事態になっていく。

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こうした親族内トラブルが続き、マウリツィオはパトリツィアへの愛は冷めていき、若い頃の友人に安らぎと愛を求めるようになってしまう。すべてを失うことを恐れたパトリツィアはピーナに相談を持ち掛け、最悪の手段を講じることにした。

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エンターテインメント性もあるクライムサスペンス

GUCCIの歴史は、グッチオ・グッチが1921年イタリアのフィレンツェに自分の店を開いたこと始まる。開業から2年後には2店舗目を開業させるなど事業は順調に展開していった。グッチオには6人の子どもがおり、三男のアルドと五男のロドルフォが後継者として選ばれ、株式を半々に相続。アルドは積極的に海外へ進出し、経営の中心を担うようになっていく。

一方、ロドルフォは若い頃俳優をしていたことから、エリザベス・テーラーやオードリー・ヘップバーン、グレース・ケリーといった女優たちと交流があり、彼女たちに使ってもらうことでGUCCIの認知度アップに貢献。兄弟間に確執はあったものの、絶妙なバランスでブランドを発展させていった。

しかし、グッチオの孫世代になるとそのバランスが崩れていく。映画は世代交代時に起こった親族間の醜い争いとそれを裏で操り、グッチ家崩壊を招いたパトリツィア・レッジャーニに焦点をあてた。

脱税や株券の署名偽造の告発、著作権侵害訴訟など泥沼のようなお家騒動が次から次へと描かれ、マウリツィオ・グッチ殺害事件に至るまでのクライムサスペンスにエンターテインメントとしての要素をたっぷりと加えている。

同族経営からコングロマリットへ

グッチオの孫世代までGUCCI の株は一族で保有していたが、アルドの息子たちが1987年、バーレーンの投資会社インベストコープに株式を譲渡。さらに1993年にはマウリツィオも全ての株式をインベストコープに売却した。ここに至るくだりについて、映画では脚色が加えられているが、GUCCIが創業者一族の手を離れたことは事実である。

マウリツィオの放漫経営によって倒産寸前となっていたGUCCIが再び世界の人気を誇るブランドへと復活するのは1994年に就任したクリエイティブディレクターのトム・フォードの才能とCEOのドメニコ・デ・ソーレの経営手腕によるところが大きい。

作品ではトム・フォードのファッションショーを再現。成功を祝う席でマウリツィオはインベストコープから退任を迫られる。言いようのない悔しさをにじませたアダム・ドライバーの演技も見どころの1つとなっている。

有名ブランドを次々と買収 敵対的買収の標的にも

その後、映画では描かれていないが、インベストコープは1995年、1996年の2回に分けて保有していた全ての株式を売却。LVMHグループのバーナードアルノーがGUCCIの敵対的買収に乗り出したが、GUCCIは1999年にPPR社(ピノー・プランタン・ルドゥート、現ケリング社)と提携してグループ会社となり、セルジオ・ロッシ、ブシュロン、イヴ・サンローラン、アレキサンダー・マックイーン、バレンシアガ、ボッテガ・ヴェネタを傘下に入れた。

しかし、経済的立役者だったトム・フォードとドメニコ・デ・ソーレは2004年にGUCCIを離れ、トム・フォード・インターナショナルを設立する。PPR社との意見の食い違いがあったらしい。GUCCIは創業者一族のお家騒動だけではなく、その後も世間を賑やかせてきたのである。

補足だが、パトリツィアが傾倒し依存した占い師ピーナを演じたサルマ・ハエックはケリング社CEOのフランソワ=アンリ・ピノーの妻である。GUCCIがケリング社に依存したことを考えると興味深い。

文:堀木三紀(映画ライター/日本映画ペンクラブ会員)

<作品データ>
『ハウス・オブ・グッチ』
原題:HOUSE OF GUCCI
監督:リドリー・スコット
脚本:ベッキー・ジョンストン、ロベルト・ベンティベーニャ
原作:サラ・ゲイ・フォーデン『ハウス・オブ・グッチ 上・下』(実川元子訳、ハヤカワ文庫、2021年12月刊行予定)
製作:リドリー・スコット、ジャンニーナ・スコット、ケヴィン・J・ウォルシュ、マーク・ハッファム
出演:レディー・ガガ、アダム・ドライバー、アル・パチーノ、ジャレッド・レト、ジェレミー・アイアンズ、サルマ・ハエックほか
配給:東宝東和
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公式サイト:https://house-of-gucci.jp/
2022年1月14日(金)全国公開

ハウス・オブ・グッチ
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堀木 三紀 (ほりき・みき)

映画ライター/日本映画ペンクラブ会員

映画の楽しみ方はひとそれぞれ。ハートフルな作品で疲れた心を癒したい人がいれば、勧善懲悪モノでスカッと爽やかな気持ちになりたい人もいる。その人にあった作品を届けたい。日々、試写室に通い、ジャンルを問わず2~3本鑑賞している。(2015年は417本、2016年は429本、2017年は504本、2018年は542本の映画作品を鑑賞)


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