『007/ダイ・アナザー・デイ(2002年)』でボンドウーマンを務め、デヴィッド・フィンチャー『ゴーン・ガール(2014年)』の演技でアカデミー賞にノミネートされた英国女優ロザムンド・パイク。そんな彼女が最新作で2021年のゴールデングローブ賞(コメディ/ミュージカル部門)主演女優賞を受賞したのが、12月3日より全国公開となる『パーフェクト・ケア』です。法定後見人の立場を悪用するタフなヒロインを演じています。

資産家の老女ジェニファー役に『ハンナとその姉妹』『ブロードウェイと銃弾』で二度アカデミー助演女優賞を受賞してるダイアン・ウィースト、『ゲーム・オブ・スローズ』のティリオン・ラニスター役で知られるピーター・ディンクレイジがロシアンマフィアを迫力満点に演じています。

法定後見人のマーラ(ロザムンド・パイク)は、判断力の衰えた高齢者を守り、ケアすることを生業にしている。常にたくさんの顧客を抱え、 裁判所からの信頼も厚いマーラだが、実は医師やケアホームと結託し高齢者たちから資産を搾り取る悪徳後見人だった。
パートナーのフラン(エイザ・ゴンザレス)とともにすべては順風満帆に思えたが、新たに獲物として狙いを定めた資産家の老女ジェニファー(ダイアン・ウィースト)をめぐり、次々と不穏な出来事が発生し始める。
身寄りのないはずのジェニファーの背後にはなぜかロ シアン・マフィア(ピーター・ディンクレイジ)の影が。迫りくる生命の危機、まさに絶体絶命、マーラの運命は果たして…

最近、アメリカのエンタメ界に君臨する歌姫・ブリトニー・スピアーズが、父親のジェイミーを成年後見人から外そうとしていると、ゴシップニュースで話題になりました。
ブリトニー自身の口から、過干渉ともいうべき(内容はかなり生々しいものでした)父親からの束縛が語られると、スピアーズが法定後見制度に苦しんでいることを知ったファンが「#FreeBritney」のスローガンを掲げ、裁判所前で抗議運動を展開するまで話が広がっています。流石は訴訟の国、アメリカらしいエピソードです。
『パーフェクト・ケア』の原題は『I Care a Lot』。監督のJ・ブレイクソンはまだ作品数は多くありませんが、サスペンス描写には定評のある監督です。今作は原題からも分かるように、程よいブラックユーモアを利かせた作品に仕上げています。
「人間を商品化して搾取する」という法の抜け穴をかいくぐっている人間が実に多いことを知ったブレイクソンが脚本を執筆。ブレイクソンの監督デビュー作でもある『アリス・クリードの失踪』で組んだプロデューサーのテディ・シュワルツマンは脚本を一読しただけで、かなり気に入り、すぐに映画化に動き出したとのことです。
ブレイクソン監督がファンだったというロザムンド・パイクのもとにこの脚本が届くと、彼女もすぐに魅了され、出演を快諾しました。
主人公マーラについて、ロザムンド・パイクは「マーラは私がスクリーンで見たいと思っていた女性そのものだった。これまで男性にばかり許されてきた、残忍で野心的で、臆面もなく欲しいものを追い求める、そういうことが許される人物。彼女は勝ちにこだわっていて、お金を稼ぎたがっている。そして嫌われることに何の恐れも抱いていない。たしかに彼女は人に好かれないタイプだけど、でも愛おしくなり、応援してしまう。」と熱く語るほどのほれ込みようです。
結果として、実績派(しかも熱意がある)俳優が揃ったことで、『パーフェクト・ケア』はただの不謹慎な映画ではなく、ニヤリとそしてドキリとさせられる映画に仕上がりました。

間違ってもマーラのような後見人のお世話にはなりたくありませんが、気持ちとは裏腹に、どこかでその活躍(?)を見続けてみたいと思うのも、また事実です。
映画の終盤で介護ビジネスにまつわるやり取りがありますが、背筋が寒くなります。少子高齢化が進んでいる日本においても、高齢者を身内だけで支えることは無理な時代がやってくるでしょう。アメリカだから、映画だから、ということだけでこの映画をやり過ごすのは少し危険な気もします。
なお、本作の日本語吹き替え版は、劇場公開と同日の12/3(金)よりU-NEXTにて独占配信されるとのことです。
文:村松健太郎(映画文筆家)
<作品データ>
『パーフェクト・ケア』
原題・英題:I Care A Lot
監督: J・ブレイクソン
出演:ロザムンド・パイク、ピーター・ディンクレイジ、エイザ・ゴンザレス、ダイアン・ウィースト
配給:KADOKAWA
2020/英語/118分/シネスコ/カラー/5.1ch/原題:I Care A Lot/日本語字幕:牧野琴子
12/3(金)~全国劇場【3週限定】公開&デジタル配信開始
公式サイト https://movies.kadokawa.co.jp/perfect-care/

『ジェントルメン』で犯罪映画に原点回帰したガイ・リッチー監督が『ワイルド・スピード』シリーズなどでトップスターとなったジェイソン・ステイサムと16年ぶりにコンビを組みます。
『ビリーブ 未来への大逆転』は、1970年代の米国で根深い男女差別の解決に挑む、後に最高裁判事まで上り詰めるルース・ベイダー・ギンズバーグの若き日を描いた作品。
従業員が勤務先から着服する横領事件は後を絶たない。今回は、銀行で働く平凡な主婦が、ふとしたきっかけで横領に手を染め、転落していく様を描いた映画『紙の月』を紹介する。
『Mank/マンク』『あと1センチの恋』のリリー・コリンズと『ミッション:インポッシブル』シリーズや英国製コメディーでお馴染みのサイモン・ペッグが共演したスリラー作品。
多額の負債を抱える架空の町「緑原町」を舞台に、故郷の町長へ転身するエリート商社マンの奮戦を描くビジネスドラマ。美しい北海道の自然を背景に、渦巻く権謀術数に立ち向かう若き町長を大泉洋が熱演する。
『ピエロがお前を嘲笑う』は、2014年にドイツで公開され大ヒットを記録したサスペンス映画です。トリッキーな仕掛けが満載でエンディングについてはアッと驚くこと間違いなしの展開が待っています。
ガイ・リッチー監督の映画『ジェントルメン』が本邦公開となりました。本作品を一言で表すとすれば、通好みの演技合戦が楽しい「群像クライムサスペンス」でしょうか。
『ザ・コンサルタント』は、裏社会で生きる会計士が巨大企業の不正に裁きを下すダークヒーローアクション。自閉症という裏テーマが作品に深みを持たせており、ヒューマンドラマとしても見ごたえのある作品だ。