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やり手金融トレーダーが南仏で人生の喜びに気づく『プロヴァンスの贈りもの』

※この記事は公開から1年以上経っています。
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『プロヴァンスの贈りもの』は、億単位のお金をやりとりするロンドンのマネートレーダーが、叔父の残したプロヴァンスのワイナリーで過ごすうち人生に大切なものに気がついていく人間ドラマだ。

本作を監督したリドリー・スコット自身、実際にブドウ園を持つほど大のプロヴァンス好きであるらしく、映像からは随所に南仏愛を感じることができる。崖に沿って建物が並ぶ丘陵地の美しい風景や観光客でにぎわうビストロ、陽光降り注ぐブドウ畑など、旅行気分を味わえる。

『プロヴァンスの贈りもの』あらすじ

ロンドンの金融業界でトレーダーとして辣腕をふるうマックス(ラッセル・クロウ)は、幼い頃慕っていたおじのヘンリー(アルバート・フィニー)が亡くなり、彼の所有していたワイナリーを相続することとになる。

しかし長年おじとの親交は途絶えており、物事を損得で考えるマックスにとってもはや思い出のシャトーも売買の対象でしかない。

売却を前提に現地に赴いたマックスだったが、トラブルから帰国の飛行機に乗り遅れしばしの休暇をプロヴァンスで過ごすことになる。

何もかもが足早に過ぎていく都会とはまるで違うゆったりとした時間を過ごす中で、おじと過ごした幸せな日々を思い起こすマックス。

やがてビストロのウェイトレス、ファニー(マリオン・コティヤール)と出会い恋に落ちたマックスは、自分にとって本当に必要なものは何かを見つめ直していく……。

強引な取引でわかる主人公の性格

映画は開始早々、主人公マックスの仕事ぶりを映し出していく。「今日は容赦なく攻めるぞ」と部下を鼓舞するマックスは、タイミングを見計らって短時間で大量に売り、強引に下落させて底値で買い戻すという、なかなかにグレーな取引で多額の利益をあげるのだ。

「売れ売れ!」「買え買え!」と狂乱するトレーダーたちの姿は多分に誇張されているとはいえ、金融業界の暗部を描いているともいえるだろう。

利益至上主義者のマックスは、目的のためなら手段を選ばない非情な人間だ。そんな彼がプロヴァンスの素朴な生活で、身も心も表情までもが変化していく。

人気監督が「自分へのご褒美」?

本作の魅力はなんといっても、舞台となるプロヴァンスの雰囲気そのものだろう。美味しいワインと料理、魅力的な女性、心地よい陽気と静かな生活……。マックスのプロヴァンスでの暮らしは、日々あくせくと働くビジネスマンが憧れる夢そのもの。

リドリー・スコット監督は愛するプロヴァンスを舞台に本作を企画し、30年来の友人であるプロヴァンス在住の小説家ピーター・メイルに原作を依頼している。また、主人公マックスを演じるラッセル・クロウは、アカデミー賞受賞作『グラディエーター』でも組んだ気心の知れた俳優でもある。

映像から肩の力が抜けたようなリラックスした雰囲気が伝わってくるのはおそらく、監督自身も穏やかな気持ちで撮影に臨んでいたからだろう。

2000年に『グラディエーター』でアカデミー賞を受賞し、その後も毎年のように大作・話題作を作り続け働きづめだったリドリー・スコット監督にとって、癒しのような、自分へのご褒美的な作品だったのかもしれない。

ちなみに本作の原題『A GOOD YEAR』とは、ワインの「当たり年」という意味。日々の忙しさを忘れさせてくれる一杯のワインのような、芳醇な香り漂う大人のための映画である。

 文:M&A Online編集部

<作品データ>
原題 A GOOD YEAR
監督 リドリー・スコット
脚本 マーク・クライン
原作 ピーター・メイル『プロヴァンスの贈りもの』
製作 リドリー・スコット
出演 ラッセル・クロウ、アルバート・フィニー、マリオン・コティヤール
118分/アメリカ/2006年

プロヴァンスの贈りもの


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