松田優作演じる朝倉哲也は二つの顔を持つ男であった。昼間は、東和油脂経理課に勤める地味なサラリーマン。しかし、夜は殺人も犯す冷酷な犯罪者であった。物語は一億円強盗殺人事件から始まり、東和油脂の乗っ取りを進めていく…。
何億円というカネが朝倉の前を行き交う。全てを手に入れたかのように見える朝倉だが、女・カネ・薬物が彼を次第に狂わせる。
一億円の強盗殺人事件で盗んだカネは、紙幣番号が控えられているため足がついてしまう。安全な紙幣にするためカネを薬物に変えようとするところから、朝倉の野望は次第に大きくなっていく。そして最後には、横領という不正に手を染める自社の役員を相手取り、カネをゆするのだ。
たった一人の男が、誰かの力を使うことなく自分の体と頭脳一つで危ない橋を渡っていく姿にロマンを感じる。
現在、厳しい社会の中で日々もがきながら生きている人たちや会社という大きな組織の中で必死に生きている人たちにとって、朝倉のどこか自由奔放な姿は息苦しい日々を生きる人の願望でもあるのかもしれない。
本作は、現実的にはあり得ないことが無限に可能である映画の世界の中で繰り広げられる、男の憧れや希望がつまった作品である。誰しも一度は「可愛い女を連れて、大金と共に役員を前に暴れてみたい」という夢を抱くものだろう…。
朝倉の相手役として、風吹ジュン演じる京子という女が登場する。彼女は経理部の部長の愛人であるため朝倉は会社の内情を聞き出すために彼女に近づく。
出逢った日から共に惹かれあっていく二人だったが、そんな最愛の京子に朝倉は殺されそうになる。
「どんなに悪に手を染めていても私はあなたを愛している」と言うまでに朝倉を愛していたにも関わらず、なぜ京子は朝倉を殺そうとするのか。
それは社長の娘と婚約してしまう彼を見ていられないから。他の人と結婚するくらいなら、自らの手で殺し、永遠に彼を愛し続けたいと京子は思ったのではないだろうか。
誰もが一度はなってみたいけれど、なれないダークヒーロー。権力に振り回されることなく、自分が振り回す方になる。犯罪を犯しているにも関わらず、なぜか主人公を応援してしまいたくなる。それはきっと彼から愛と孤独を感じるから。
本作では、ハードボイルドな役柄が真骨頂の松田優作を堪能できる。単なる荒くれ者ではない繊細さを併せ持つ朝倉。そんな完璧ではない人柄に魅力を感じ、観ている側は親近感を抱いてしまうのかもしれない。
彼が最終的に何を求めていたのかをこの映画は描いていないが、彼は孤独だったことは間違いない。
虚しいラストは是非ご自身で見届けて欲しい。
文:M&A Online編集部
<作品データ>
蘇る金狼
監督:村川透
出演:松田優作、風吹ジュン、佐藤慶
2時間10分、1979年

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