本日(8月15日)は終戦記念日。「戦争は映画であり、映画は戦争なのだ」と述べたのはポール・ヴィリリオだった。まばゆい閃光と耳をつんざく轟音は、20世紀における「戦争」と「映画」を奇妙に結び付ける。両者に求められているのは、大衆を動員し、非現実へと誘うスペクタクルにほかならない。

2001年のメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)に合わせて全米公開された『パール・ハーバー』は、そんなスペクタクルの新時代を告げる戦争映画となった。

真珠湾攻撃を題材にとった娯楽作

タイトルが示す通り、本作が描くのは1941年12月7日に起きた真珠湾攻撃である。日米開戦の発端となったこの奇襲作戦が、アメリカにどのような屈辱をもたらしたかは言を俟たない。とりわけ多くの戦死者を出した戦艦アリゾナは、現在でも海底に保存され、直上には記念館が建てられている。

同じく真珠湾攻撃を扱った作品としては、1970年の日米合作映画『トラ・トラ・トラ!』が知られている。しかし、両者の内容はまったく対照的だ。『トラ・トラ・トラ!』が日米双方の資料に基づき、真珠湾攻撃に至るまでの過程を詳らかにした歴史ドラマである一方で、本作『パール・ハーバー』は歴史に題材をとった娯楽作。時代考証よりも、ロマンスとアクションに重きを置いた作品である。

したがって、史実との整合性に関しては目を瞑るよりほかにない。それより重要なのは、歴史認識における視差を含みながらも、ハリウッドが真珠湾攻撃に対して、曲がりなりにも「まなざし」を向けた事実である。純粋なエンターテインメントとして「屈辱の日」が描かれるとき、そこには一体どのようなドラマが展開されるのだろうか。

飛行機乗りをめぐる三角関係の行方

物語の前半部は、甘美なラブ・ロマンスを中心に展開される。主人公の青年レイフ(ベン・アフレック)は、幼少期からの親友であるダニー(ハート・ハ―ネット)とともにアメリカ陸軍に入隊。憧れの戦闘機パイロットとして訓練に励んでいた。

しかし、ヨーロッパの戦況は思わしくない。上官からその腕を見込まれたレイフは、自ら志願してイギリス空軍に参加。一足先に戦場へ飛び込むことを決意する。狂熱の恋に落ちた看護師のイブリンと、弟分のダニーをハワイに残して。

という訳で、バトル・オブ・ブリテンで激しい航空戦を繰り広げるレイフだったが、ドイツの猛攻を前に撃墜。機体もろとも海に沈んでしまう。恋人の戦死を知らされたイブリンは泣き崩れ、ダニーもまた喪の哀しみに暮れる。傷心する二人はいつしか惹かれ合い、愛をはぐくむのだった。

ところが、レイフは九死に一生を得ていた。ハワイに帰還を果たした彼は、イブリンの心変わりを知ってしまう。いくら戦死扱いだったとはいえ、レイフにしてみればダニーに横恋慕されたも同然の状況。こうして、二人の飛行機乗りは一転して不倶戴天の仲となるのだった。

VFXを駆使したスペクタクル映像

そんな三角関係の裏側で、日本軍は着々と作戦の準備を進めていた。1941年12月7日(ハワイ時間)。その歴史的な日の朝を迎えるのは、物語も中盤にさしかかる頃である。

ド派手なアクションシーンは、『アルマゲドン』(98年)でお馴染みマイケル・ベイ監督の真骨頂だ。最新のVFXと大がかりのセットを使い倒し、日本軍の奇襲を劇的に描き出す。軍人と民間人の区別なく、機銃掃射に晒されるオアフ島。艦隊や飛行場のみならず、病院まで容赦ない攻撃を受けるのである(いずれも史実と異なるとして、大きな物議を醸した場面だ)。

さすがに慎重さを欠いた表現だが、スペクタクルとしては高い完成度を誇っている。なかでもCGで再現された戦闘機は必見。ゼロ戦が現代のVFXによって蘇った最初のメジャー作品であろう。21世紀における戦争映画のメルクマールであることは間違いない。

「眠れる巨人」を叩き起こした

さて、『パール・ハーバー』の劇中で、作戦成功の報せを受けた連合艦隊司令長官、山本五十六は次のように吐露する。「われわれは眠れる巨人を叩き起こしてしまった」と。

実のところ、この言葉もまた創作に過ぎない。厳密に言えば、前述した『トラ・トラ・トラ!』の台詞を借用したものだ。とはいえ、それは言い得て妙であるように思える。真珠湾攻撃とは、勧進帳のごとく「虎の尾を踏む」作戦ではなかった。「眠れる巨人」を相手にした大胆不敵の作戦、言ってしまえば暴挙だったのである。

ちなみに『トラ・トラ・トラ!』は、この山本五十六の台詞をもって結末を迎えている。だが、それではハリウッドの問屋が卸さなかったのだろう。『パール・ハーバー』では真珠湾の顛末に加えて、報復作戦の様子まで描かれている。1942年4月、ルーズベルト大統領の鶴の一声により敢行された日本本土への初攻撃、通称「ドゥーリトル空襲」だ。

レイフとダニーはこの秘密作戦に参加し、B-25爆撃機で攻撃を行う。三角関係にも終止符を打ち、カタルシスとともに物語は幕を下ろすのである。

戦艦アリゾナの最期と『タイタニック』

『パール・ハーバー』は、他のどのような戦争映画にも増して、『タイタニック』の強い影響下にある。それは本作が史実に基づいたメロドラマである点からも、あるいはVFXやスローモーションを多用している点からも容易に推察できるだろう。甘美なロマンスのなかで、ひしひしと登場人物に迫る危機。真珠湾攻撃に至るまでの構成は、明らかにスペクタクル大作の潮流に乗ろうとしたものだ。

何より特筆すべきは、戦艦アリゾナの描かれ方である。船体を大きく傾け、およそ1,000人の乗組員とともに沈没するアリゾナの姿は、タイタニック号の最期と重なって見えるに違いない。悲劇を乗り越え、愛国心によって勝利を目指す。賛否両論となった本作だが、「強いアメリカ」を描いた作品として、これほどの好例はあるまい。

真珠湾攻撃から79年。現在でも戦艦アリゾナは真珠湾の海底に眠り、戦争の傷跡を人々に伝えている。リメンバー・パールハーバー。「真珠湾を忘れない」という言葉は、もはや憎悪と対立ではなく、鎮魂と和解の意味であってほしいものだ。

文:村松 泰聖(映画ライター)

<作品データ>
原題 Pearl Harbor
監督 マイケル・ベイ
脚本 ランダル・ウォレス
製作 ジェリー・ブラッカイマー、マイケル・ベイ
出演者 ベン・アフレック、ジョシュ・ハートネット、ケイト・ベッキンセイル
183分/米国/2001年

パール・ハーバー(映画)