映画『白昼の死角』は、1959年に発表された東大生による闇金融事件「光クラブ事件」をモデルとした高木彬光氏の社会派推理小説を映画化したもの。仲間の死を機に犯罪へ手を染めた知能犯・鶴岡が、法制度の死角をついた詐欺を繰り返す。1979年に村川透監督が映画化した。
東大法学部きっての秀才とうたわれた隅田(岸田森)は、友人の鶴岡(夏八木勲※)、九鬼(中尾彬)、木島(竜崎勝)とともに貸し金融会社「太陽クラブ」を設立。客から集めた資金を高利で貸し付けることで、巨額の利益を生み出していた。※公開当時は「夏木勲」名義
しかし1年後に隅田が闇金融容疑で逮捕。会社が大きく傾き、隅田は事務所に火を放ち焼身自殺を遂げる。
その燃える事務所を見た鶴岡は、ほのかに芽生えた悪意を胸に犯罪者として生きる道を決意。新たに設立した手形金融会社「六甲商事」を隠れ蓑に、さまざまな企業に手形詐欺を仕掛けていく。
派手な手口から、検事の福永(天知茂)は太陽クラブの残党である鶴岡をマーク。鶴岡が仕掛けた詐欺を見破り詐欺罪で勾留するが、状況証拠のみであるため逮捕には至らない。
鶴岡が次に目をつけたのは、エルバドル共和国公使秘書兼通訳のゴンザレス。彼の立場を巧みに利用し、5社相手に総額3億7000万円をだまし取った。成功に思えた一連の事件は、ゴンザレスの思わぬ失態が潜んでおり、鶴岡の完璧な計画はほころびを見せ始めていく。
手形取引は資金の融通がしやすい反面、不渡りや証書そのものの紛失などリスクも多い。その盲点を突き、完全犯罪を繰り返す鶴岡。自らを常に「善意の第三者」に置く、決してリスクを追わない鮮やかな手口に、思わず唸ってしまう。
ところで、本作で用いられた手形取引は減少の一途をたどっている。東京商工リサーチの調べによると、2019年の手形交換高は183兆9808億円とピークの1990年(4797兆2906億円)から96.1%も減少している。
現金取引が主流であった昭和の時代。信用を強く重視した取引が行われていたことが見て取れる。しかしそういった時代背景を差し引いても、登場する重役たちのセキュリティ意識の低さに驚く。
例えば、
・多額の手形を発行する相手の登記を調べず、看板だけ掛け替えた事務所で手続き
・数千万円の現金を持ったまま宴席に臨み痛飲
・他国語で書かれ内容を理解できない預かり証を信用して手形を渡す
といった行為は、目に余る。
インターネットもない時代。昭和の古き良き時代にに思いをはせながら、映画を見るのもまた小気味よい。傑作といわれた原作『白昼の死角』は文庫で手軽に楽しめる。
<作品データ>
白昼の死角
1979年・日本・154分

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