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銀行内の権力闘争を描く『ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男 』

※この記事は公開から1年以上経っています。
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欧州ナンバー1を誇るフランスの銀行で頭取に抜擢された男性が生き残りをかけ、壮絶な権力闘争に踏み出していく。映画『ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男』は、『Z』『告白』『戒厳令』の三部作で知られる社会派の巨匠コスタ=ガヴラス監督が描いた経済サスペンス。パリ、マイアミ、ニューヨーク、ロンドン、東京を舞台に、欲望と欺瞞に満ちたマネーウォーズが繰り広げられる。

主演は『プライスレス 素敵な恋の見つけ方』のガド・エルマレ。主人公に無理難題を押し付けてくる筆頭株主をガブリエル・バーンが扮している。 日本では劇場公開されず、WOWOWでの放送が日本初公開となった。

 

<あらすじ>

フランスの大手金融機関フェニックス銀行の頭取がガンに倒れる。頭取が後任に指名したのは、腹心として彼に仕えてきたマルク・トゥルヌイユ(ガド・エルマレ)だった。マルクを操り実権を握り続けようと企む頭取と、頭取が死んだらお払い箱にしようと考える重役たちを出し抜き、マルクは頭取の座を確固たるものにしようと画策する。

筆頭株主であるアメリカのヘッジファンド・オーナー、ディトマー(ガブリエル・バーン)からレイオフを求められると、マルクは大規模リストラを実行。さらに日本の銀行を買収しようと画策するが、それはディトマーからマルクに仕掛けられた巧妙な罠だった。

<見どころ>

ゴールドマン・サックスに5年勤務していたマルクは頭取のゴーストライターを務めたことで気に入られ、フェニックスに移ってきた経済の専門家。実務経験は浅いが、その知識力で頭取を支え、フェニックスを欧州ナンバー1の銀行に育てあげた。ノーベル賞を目指していたと語り、もともとはお金や権力に執着するタイプではなかったマルクが降って湧いたような頭取就任をきっかけに自らマネーゲームにのめり込んでいく。

頭取として実務の陣頭指揮を執り、武器、汚染化学物質、マネーロンダリング関連は禁止し、倫理面での正統性をアピールする。その一方で、中小企業への融資は利益が少ないので減額し、高頻度取引が専門のトレーダーを倍増させ、流動性の低い証券などを見直し、市場で売り払う。

マルクは筆頭株主に過大なレイオフ要求され窮地に陥るが、文化大革命で腐敗幹部を一掃した毛沢東の戦術を妻から提案され、クビと思わせない解雇を成し遂げ難局を乗り切った。物語は株価の変動などの数字を何度も話題に挟み込んで展開し、日本の大手銀行買収を決断するくだりで緊張感は最高潮に達する。

強引とも思える改革を展開するマルクは陰謀渦巻く銀行という伏魔殿で生き残れるのか。大口株主に牛耳られる銀行、政治屋と組んでの市場操作、銀行の支配に逆らえず従うしかない社会制度…。マルクは諦観した表情で「不公平で無慈悲だが世界規模なんだ。誰も止められない」と形容する。

コスタ=ガヴラス監督はお金や権力に翻弄される人間の醜さと滑稽さをスリリングな演出で描く。マルクを取り巻く人々を「(マネーゲームという)遊びを続ける大きな子供たち」とマルク自身に揶揄させ、皮肉を込めてグローバル経済の暗部を浮き上がらせた。

文:堀木 三紀(映画ライター)

『ザ・キャピタル マネーにとりつかれた男』
原題:Le Capital
監督:コスタ=ガヴラス
原作:ステファヌ・オズモン
出演:ガド・エルマレ、ガブリエル・バーン、ナターシャ・レニエ、イッポリット・ジラルド、リヤ・ケベデ
2012年/フランス/カラー/114分/
©2012 – KG Productions – France 2 Cinéma – Visa d’exploitation N°127605 – Dépôt Légal 2012

ザ・キャピタル


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