M&A:対抗措置発動の株主意思確認総会においてMoM要件の設定を認めた事案(東京高決令和3年11月9日)
短期間の株式の大量買付けに対する対応措置として会社が新株予約権の無償割当てを行おうとしたことを対して、大量買付者がその新株予約権無償割当てを仮に差し止める旨の仮処分を求めた事案において、東京高裁は、被保全利益の疎明を欠くとして申立てを却下しました。本事案においては、対抗措置についての株主意思確認総会において、いわゆる MoM要件が設定されていました。MoM要件(Majority of Minority 要件)とは、一般的に、株主意思確認総会における決議要件を、大量買付者や取締役等を除く出席株主(非利害関係出席株主)の議決権の過半数とすることを指します。
本事案では、新株予約権無償割当てが会社法247条2号の「著しく不公正な方法」によって行われたか等が争点となりました。東京高裁は、その判示の中で従来の判例を踏襲し、経営支配権の維持等を主要な目的とする場合には「著しく不公正な方法」に該当するとしつつ、特定の株主による会社の経営支配権取得の現実的可能性が生じ、それによって会社の企業価値が毀損され、ひいては株主の共同利益が害されることになるような場合にそれを防止するために行われる新株予約権無償割当てについては、①利益侵害を受けるおそれのある株主が、株主総会において、新株予約権無償割当ての措置をとる必要があると判断し、かつ、②新株予約権無償割当ての措置が相当である場合には、「著しく不公正な方法」によるものではないとする一方で、③株主の判断が株主総会の決議によって示される場合には、株主の判断の正当性を失わせるような重大な瑕疵が存在することを特定の株主が主張疎明した場合には、たとえ新株予約権無償割当てが会社の企業価値の毀損ひいては株主の共同利益が害されることを防止することを主要な目的としてされたものであっても「著しく不公正な方法」によるものと解するのが相当であるとしました。
その上で、東京高裁は、③の要件との関係で、MoM要件の設置に関して、短期間の株式の大量買付けについて強圧性があることは否定できないとした上で、大量買付者を除く株主が大量買付けについて適切な判断を下すために十分な情報と時間を確保することが会社の企業価値の毀損ひいては株主の共同利益を害することとなるか否か、それを防止するために対抗措置を発動することが必要か否かについて株主総会において大量買付者等を除く株主のみの意思確認を行うことは、直ちに不合理であるとはいえないとし、対抗措置発動の株主意思確認総会における MoM要件の設定を認め、株主の判断にその正当性を失わせるような重大な瑕疵は認められないと判断をしました。
本事案は、同種事案において MoM要件の設定を試みる場合には参考となる先例であると考えられます。
パートナー 大石 篤史
アソシエイト 木内 遼
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