政府は12月15日の臨時閣議で、新型コロナウイルスの追加経済対策となる2020年度第3次補正予算案を決定した。業種・業態転換や事業再編で生産性を高める中小企業などに対し、最大1億円を補助する「事業再構築補助金」を創設。地域の貴重な経営資源を次世代につなぐ事業承継・引継ぎ推進事業なども展開する。
事業再構築補助金の創設は、12月1日に開かれた政府の成長戦略会議(議長・加藤勝信官房長官)の実行計画に明記。M&Aによる規模拡大などを通じた生産性の向上を図るとした。政府は12月8日に閣議決定した総合経済対策でも、事業再編を含めて規模拡大を図る事業者に設備投資費用などを補助する方針を示した。
経済産業省によると、事業再構築補助金には1兆1485億円を計上。補助対象は、1.申請前の直近6カ月間のうち売上高が低い3カ月の合計売上高が、コロナ以前の売上高が低い3カ月間の合計売上高と比較して10%以上減少した中小企業など。2.自社の強みや経営資源を活かしつつ、経産省が示す「事業再構築指針」に沿った事業計画を認定支援機関などと策定した中小企業など。
補助額は100万円から1億円で、補助率は2分の1か3分の2。組織再編などで中小企業から中堅企業に成長する事業者(400社限定)への補助額、補助率を手厚くする。
また、事業承継・引継ぎ推進事業には56億6000万円を確保し、事業承継を契機とした業態転換や多角化を含む新たな設備投資、販路開拓などの資金を補助。廃業にかかる費用、事業引き継ぎ時の士業専門家の活用費用も支援する。
親族内承継などへの補助上限額は400万円だが、M&Aで引き継ぐ場合は800万円となる。いずれも補助率は3分の2で、廃業を伴えば200万円を上乗せする。
後継者に求められる素養・能力と、それらの習得に必要な後継者教育の型を明確化するための承継トライアル実証事業も実施。各都道府県に設置されている事業引継ぎ支援センターの相談対応やマッチング支援も充実させる。
このほか、日本政策金融公庫を通じた中小企業などの資金繰り支援に186億円を計上。事業引継ぎ支援センターなどのサポートで付加価値向上計画を策定して事業を承継・集約する場合は、基準金利を0.65%下回る低利で事業承継・集約・活性化支援資金を貸し付ける。
コロナ禍による業況悪化で継続が困難になった事業の承継・集約は0.4%の引き下げ幅とするが、小規模事業者からの引き継ぎは0.65%に拡大する。
第3次補正予算案の一般会計総額は19兆1761億円。政府・与党は2021年1月18日召集の通常国会に提出し、1月中の成立を目指す。
文:M&A Online編集部
関連リンク:令和2年度第3次補正予算案の事業概要(PR資料)