事業別の営業損益(EBIT)推移

 トール社の事業別EBIT(支払金利前税引前利益)推移を見ると(下図参照)、いわゆる3PL事業等を行うコントラクト事業こそ堅調なものの、豪州国内物流事業、航空・海上・陸上貨物輸送を行う国際フォワーディング事業等の実績の悪化は著しく、全体の足を大きく引っ張る格好となっている。

事業別EBITの推移
(日本郵政グループ2017年5月15日発表「2017年(平成29年)3月期決算の概要」より)

 日本郵政としては、当初目的とした国際物流事業での事業拡大を実現していく前に、豪州内の物流事業の収益悪化により減損処理を余儀なくされてしまった結果である。

 豪州内の物流事業の収益悪化の主な原因としては資源価格の下落、中国経済豪州経済の減速等としているが、2017年4月25日の発表では、買収価額が少し高すぎた、現地に任せすぎたとの話もあった。買収価額は6,200億円(2015年5月買収)で、減損損失は2017年3月末に4,003億円。買収からわずか1年10カ月である。

【業績推移】銀行事業と生命保険事業が収益の柱に

ここ数年の連結経常収益を見てみると、平成29年3月期経常収益は前年同月比6.5%減の13兆3,265百万円である。ちなみに、営業利益は前期比14.6%減の1兆291億円である。

連結経常収益推移 (単位:百万円)

 また、事業部別(セグメント別)の営業利益のグラフを見てみると、銀行事業の営業利益(ゆうちょ銀行)、生命保険事業の営業利益(かんぽ生命保険業)が収益の柱となっていることがわかる。

セグメント別営業利益推移(単位:百万円)

 日本郵便の主要事業の郵便・物流事業の利益増加策として、今期は郵便料金値上げ等の対策を講じている。しかし、全体としても5期連続して経常収益の減少が続いており、上場会社としては収入・利益ともに発展性のある計画が描けていないのが現状である。

買収は「買った後が重要」と考えさせられる結果に

 M&Aにより、株主と経営体制が変わった後、既存事業を維持しながら相互にシナジーを発揮することにより、払ったのれん代を回収し、いかにそれ以上の利益を上げていくか。買収することが目的ではもちろんなく、買って終わりではない。日本郵政のM&Aは、そのことを改めて考えさせられるM&Aの事例ではないだろうか。

  この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部