2.株式譲渡契約書の注意点

以下では、株式譲渡契約書を作成する際の注意点をご説明していきます。

2-1.契約当事者

M&Aで株式譲渡を利用するときには契約当事者に注意が必要です。多くの場合、売主は売り手会社のオーナーであり「個人」、買主は買手企業としての「法人」になります。企業同士の契約ではなく、株式譲渡の当事者は「個人対法人」になるので、間違えないようにしましょう。   

なお売り手企業自身が法人として所有している自社株を売却する場合、当事者は売り手企業としての法人と買手企業としての法人となり、法人同士の取引になります。

当事者を間違えて記載すると契約書は完全に意味をなさないので要注意です。

2-2.譲渡制限の有無

次に確認しておきたいのが「譲渡制限の有無」です。譲渡制限とは、定款によって株主総会や取締役会の承認決議を得ないと株式を譲渡できないと定款で定めることです。

売り手企業の株式が譲渡制限株式の場合、売主と買主だけが譲渡の約束をしても、承認決議を得られない限り株式の売買が不可能となります。必ず「株主総会や取締役会で株式譲渡について承認を得る」という条項が必要です。

譲渡制限がついているかどうかについては、売り手会社の定款や登記事項証明書によって確認できるので、契約書作成前に確かめておきましょう。

2-3.株券発行会社かどうか

株式譲渡の際には、売り手会社が「株券発行会社」かどうかも確認する必要があります。「株券発行会社」とは、定款によって「株券を発行する」と定めている会社です。株券発行会社の場合、現実に株券を売主から買主に交付しないと株式譲渡が有効になりません。

2006年に会社法が施行される前に設立された会社の場合、株券発行会社である可能性が高くなっています。定款や登記事項証明書を見ればわかるので、契約書作成前に確認しておきましょう。

なお、会社法施行前の株券発行会社であっても、定款を変更すれば株券不発行会社とすることが可能です。そうすれば、実際に株券を交付しなくても株式譲渡を完了できます。

2-4.株式の特定と代金の明示

株式譲渡契約書では、どこの会社の株を何株譲渡するのか、明示する必要があります。またそれについての譲渡対価も記載します。これらに誤りがあるとトラブルになりますので、必ず確認しましょう。

なお譲渡代金が「無償」の場合には、「株式贈与契約書」となります。(→株式贈与契約書のサンプルはこちら

2-5.譲渡代金の支払い方法と所有権移転時期

譲渡代金の支払い方法や支払期限、所有権移転時期についても確認しましょう。 

株式の譲渡代金は、契約書作成時にその場で現金で払う方法と後日に振込送金する方法があります。現実には後日に振込送金するパターンが多くなっています。その場合、必ず入金の期限を明示しましょう。 

また所有権については「支払いと同時に所有権を移転する」と明示すべきです。そうでないと、代金を払ってもらっていないのに株式の所有権のみが移転した状態になってしまう可能性があります。

2-6.株主名簿の名義書き換え

株式を譲渡したら、すぐに株主名簿の記載を買主に改めなければなりません。そうしないと買主は会社に対して株主権の行使ができません。   

株券不発行会社の場合には、買い手が会社に株券を示すことができないので、買主と売主が共同して株主名簿の書き換えを請求する必要があります。株式の所有権が移転したらすぐに共同して名簿の書き換え請求を行うことを契約書に定めておきましょう。

2-7.表明と保証

譲渡する株式に問題がないことを売主が買主に表明・保証する条項であり、買主の権利を守るために重要です。

以下のような内容が保証事項となります。

・売主が株式の真正な所有者であること
・譲渡する株式に質権などの権利が設定されていないこと
・発行会社の財務内容が直近の決算書類のとおりであること
・発行会社に決算書に記載のない簿外債務が存在しないこと
・発行済株式総数についての表明

2-8.解除や損害賠償

お互いに契約違反行為があった場合には解除や損害賠償請求を出来ることを定めます。

一般的には以下のようなケースに解除や損害賠償が可能となります。

・買主が代金を払わない
・売主が株券を引き渡さない
・表明事項と著しく異なる事実が判明

 損害賠償金額に上限をもうけたり期間制限を設けたりすることも可能です。

2-9.競業避止義務

M&Aでは、売り手企業の競合避止義務を規定することが極めて重要です。売り手企業の元社長が近くでまた同じ業種のビジネスを営むと、買手企業にとって著しい障害となるためです。

そこで、一定期間は同業種の商売をすることを禁止します。従業員の引き抜きなども合わせて禁じておくことが多いです。

2-10.合意管轄

株式譲渡契約について万が一裁判トラブルに発展した場合、どこの裁判所で審理を求めるかについて記載します。


次のページでは、契約書にかかる印紙税について解説します。