「前世紀の遺物」が意外な返り咲きを遂げようとしている。米クアルコムが現地時間の2月27日から開催されている「MWC Barcelona 2023」(スペイン・バルセロナ)で、20世紀末に打ち上げられた衛星携帯電話回線を利用する「Snapdragon Satellite」を実装したスマートフォン(スマホ)を、端末メーカーと共同で開発していると発表した。米アップルも昨年発売した「iPhone14」シリーズで同様の機能を搭載しており、一部地域でのサービスを始めている。なぜ、ここに来て衛星通信が見直されているのか?
クアルコムのSnapdragon Satelliteは「イリジウム」の通信回線を利用している。イリジウムは高度780kmの低軌道を周回する66基の人工衛星網を利用して、世界中のどこからでも通信できる衛星携帯電話システム。低軌道衛星を利用することで小型軽量化を実現。高所登山や遠洋航海、災害時の連絡手段として利用されている。
1998年11月に米イリジウム社がサービスを始めたものの端末が高価だった上に、一般携帯電話の基地局が増えた結果、通常の生活圏はもちろんのこと高山や離島でも通話ができるようになったことから、衛星携帯電話の需要は伸び悩んだ。
本拠地の米国でも約5万契約に留まり、1999年8月にイリジウム社は倒産。一時は通信衛星を大気圏に突入させて焼却処分する計画もあったが、2000年11月にイリジウム・サテライト社(現イリジウムコミュニケーションズ)が事業承継した。
しかし、その頃には携帯電話でやりとりされるのは文字データから音楽や画像などのリッチコンテンツが中心となり、イリジウムの通信速度である2.4kbpsでは実用的なデータ通信はできない。もっぱら音声による「通話」端末として利用されている。
アップルが利用する米グローバルスターは2000年1月にサービスを開始したが、2001年11月にイリジウム社と同様の事情で破産。その後の経営再建で、2004年4月に再生を果たした。2007年には第2世代の新型通信衛星48基を1400km上空に打ち上げ、データ通信速度をイリジウムの4倍の9.6kbpsに高速化するなどの改善を果たしている。
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