ソーシャルレンディングとは、これまで貸金業者や金融機関が行ってきた法人や個人への貸付の原資を投資家から募り、そのリターンを貸金業者や金融機関よりも高い金利で返す仕組みである。
冒頭で述べた通り、ソーシャルレンディングはクラウドファンディングの一種で、「貸付型(融資型)クラウドファンディング」とも呼ばれている。
クラウドファンディングの運営事業者は、匿名組合などの「集団投資スキーム」によって投資家から資金を調達し、資金需要者にお金を貸し付ける。集団投資スキームとは、投資家から集めた資金によって有価証券や事業などに投資し、そこから得られた収益を投資家に分配する仕組みだ。
集団投資スキームの自己募集には、財務局へ「第二種金融商品取引業」の登録が必要となる。また、お金を貸し付けるために「貸金業」の登録も必要になる。
ソーシャルレンディングでは、通常、借り手と投資家の間に交流はない。投資家は借り手への応援や共感ではなく、投資リターンを目的として資金を提供するのが通常だ。
通常、企業が資金を借りる場合、銀行やノンバンクなどの金融機関を選択することが多いだろう。企業がわざわざソーシャルレンディングを利用するメリットとは、どのようなものがあるのだろうか。
1.実績がなくても資金調達ができる
銀行の場合、過去の売上や取引実績が重視される。とくに実績のないベンチャー企業の場合、融資を受けるのはハードルが高い。しかしソーシャルレンディングの場合は、過去の実績よりも今後の事業計画や返済能力がより重視される。事業計画や返済能力を投資家が評価すれば、これまでの実績に関係なく資金調達ができるようになる。
2.資金調達までの期間が短い
銀行で融資を申し込んでも、すぐに融資が決定されるわけではない。融資が実際に決定されるまで、時間がかかるケースがほとんどだ。しかしソーシャルレンディングを利用すれば、投資家から資金が集まれば、スピーディーな資金調達をすることができるというメリットがある。
次に、投資家のメリットについて解説していく。
1.元本の価格変動がない
ソーシャルレンディングは株式などと違い、価格変動リスクがない。満期を迎えれば元本が変動することなく返済されるのだ。ただし、ソーシャルレンディングは元本が保証された金融商品ではないため、貸し倒れリスクがあるという点には注意が必要だ。
2.比較的高い金利収入が得られる
ソーシャルレンディングには貸し倒れリスクがあるものの、銀行預金などに比べて高い金利を得られる。利回りが5%を超える商品もあるのだ。ただしあまりにも高すぎる金利は、それだけリスクの高い企業に融資しているともいえるので、複数の商品に分散投資するなど、リスク管理が重要になる。
欧米では、多様な借り手と貸し手を直接結ぶソーシャルレンディングが、銀行に代わる金融仲介手段として定着してきている。2014年末には、米国最大のソーシャルレンディングである「レンディングクラブ」(ティッカーシンボル;LC)がニューヨーク証券取引所に上場。時価総額が1兆円をつけて注目を集めた。
英国では、2016年にソーシャルレンディングが、ISA(個人貯蓄口座)の投資対象となった。 ISAは日本のNISA(少額投資非課税制度)の手本になった制度だが、この影響で英国のソーシャルレンディング市場は大きく伸びた。
寄付型・購入型クラウドファンディングは、発展途上国の支援や環境問題などの社会貢献や、新サービスや新商品の開発・提供に賛同し、プロジェクトを支援するために行う。一方、ソーシャルレンディングを始めとした金融型のクラウドファンディングは、利息など利用者自身のお金を増やすために活用されるのが通常だ。
資金を必要としている企業や個人に不特定多数の投資家が出資するという点においては、寄付型・購入型クラウドファンディングとソーシャルレンディングは同じ側面を持っている。しかし、大きく異なるのが「金銭的な見返りを求めるか否か」という点だ。