新型コロナの影響で日経平均株価はどこまで下がるか?

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日経平均株価はどこまで下げるのか?

新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、株式市場の大幅な下落が生じています。

1月の武漢封鎖後、中国の局地的な問題ととらえられていた時期は、中国以外の市場では中国経済のダメージがどのように波及するか、という単なる1懸念材料というとらえられており、下落基調に入りつつも下げ方はさほどでもない状況でしたが、2月下旬にイタリアに波及すると一気に市場は世界的なパンデミックを織り込み始め、3月下旬まで非常に激しいボラティリティで乱高下しつつ急速な下落となりました。

日経平均株価についていえば、2/21の23,386.74円から急落して3/19に目先の底値16,552.83円を付けたのち、3末の決算における時価評価を意識してか、日銀による必死の買い支えもあって目先戻り基調となり、3/25には戻り高値19,546.63円まで戻しました。しかし、再び下落基調となり、期末経過で時価評価のための株価下支えが外れることが意識された4/1には18,065.41円まで下げています。

日付 日経平均株価
2/21 23,386.74円
3/19 16,552.83円
3/25 19,546.63円
4/1 18,065.41円

ファンダメンタルズの観点から

日経平均株価がどこまで下がるのかは、結局誰にもわかりません。

しかし、考えるヒントはいくつかあります。

まず、ファンダメンタルズの観点からすれば、株価は将来キャッシュフローの現在価値の市場予測値ですから、市場はどの程度将来キャッシュフローが落ちると考えているかという観点で分析することになります。

一般に、日本の株式市場は時価総額に対して平均4~6%程度のROEで純利益が計上され、それが再投資されて複利成長すると想定されているといわれています。

この時、マクロ経済にダメージが生じて、来期の市場平均ROEがマイナスになるとすれば、おおむねその損失相当の将来CFが失われ、その分株価が下がると考えられます。

今回のパンデミックでは、史上例のない都市封鎖が主要先進国で続々と実施されており、通常の不況における金融不安から実体経済へのダメージ波及という経路ではなく、いきなり実体経済が首を絞められて窒息するように止まってしまうという特徴があります。

いったん都市封鎖が行われると、武漢のケースでは1月23日から4月8日(予定)まで2か月半、1年の約20%に及び、その間経済が停止状態に追い込まれます。イタリアやニューヨークはさらに状況が悪く、武漢の封鎖よりも長期間に及ぶことが懸念されています。  

日本は原稿作成時の4月2日時点でまだ都市封鎖には至っておらず、相対的には諸外国よりもましであるものの、自粛要請やインバウンド需要の喪失で相当な深手を負っていることには変わりありません。

実態経済はリーマンショック以上となる可能性も

このような状況では、インフラ関係や医療関係、生活必需品関係以外の大半の企業は赤字転落を避けられず、固定費を削減せざるを得ない多くの企業が大幅な人員整理に追い込まれて失業率が上昇し、個人消費が低迷して、さらなる業績悪化のスパイラルに陥ることになり、さらに少なくない企業が倒産に追い込まれることもあるでしょう。実際に、3月下旬から帝国データバンク等の信用調査会社が発信するコロナ関連の倒産情報の件数が急増している模様です。

以上から考えると実体経済のダメージはリーマンショック以上となる可能性が高いと考えられますので、日経平均もリーマンショックの天井18,261.98円(2007/7/9)から底値7,054.98円(2009/3./10)迄の下落率61%を超えてもおかしくはないと考えられます。

テクニカル分析では

他方、テクニカル分析では、一般に上昇相場の起点から天井までの上昇幅の「1/3戻し」「半値戻し」「2/3戻し」「全戻し」や、天井から一番底までの下落額を戻り高値から控除した「N値」、同額を一番底から控除した「E値」、一番底から戻り天井までの上昇幅を一番底から控除した「戻りの倍返し」などが目安と言われています。

日経平均のアベノミクス相場の起点は衆議院解散の2012/11/16の9,024.16円で、天井は2018/10/2の24,270.62円でした。

これを上記の目安に当てはめると以下の通りとなります。

〇日経平均下落目安の推計

筆者作成

目先の一番底で既に半値戻しまでは達成しています。

しかし、ここからさらにアベノミクス2/3戻しやN値、戻りの倍返しなどを達成するとしてもリーマンショックの下落率には満たないので、アベノミクス全戻しやE値などを達成してもおかしくはないのではないかと思います。

底値の議論は時期尚早か

いずれにしても、これらは所詮当たらぬも八卦の域を出ない予想に過ぎず、ファンダメンタルズから株価の底打ちを確認できるようになるのは、コロナの世界的な収束による経済活動再開の時期が見えてくること、その間の経済的ダメージの総額が見えてくること、政策的救済にせよ、破綻処理にせよ、その経済的ダメージの後始末がどのようになるかが見えてくること、の3つの条件が達成された時になるでしょう。

まだコロナの収束時期の見通しすらついていない現状からすれば今後数か月は先行きの見えない状況が続くと考えざるを得ず、合理的な底値の議論は時期尚早ということは意識すべき局面ではないかと思います。

文:巽 震二(証券アナリスト/フリーランスマーケットアナリスト)

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