カーライルは2009年に居酒屋「はなの舞」を運営するチムニー<3178>のMBOを支援しました。チムニーはイオン<8267>がFC展開を目指して設立した居酒屋企業。業績不振が続いて1997年に食肉メーカーの米久(静岡県沼津市)に譲渡されていました。
カーライルは1株2,260円でTOBを実施すると同時に、米久から株式を買い取りました。買い付け金額は208億円。2010年にチムニーは上場廃止。そして2012年に東証2部に再上場しています。
チムニーは上場時、2009年に締結した長期借入金が82億5000万円ありました。これはカーライルが買収した際のレバレッジド・ファイナンスと考えられます。カーライルの実質的な投資額は、125億円前後だったと推測できます。
新規公開時の有価証券届出書によると、上場時にカーライルが売り出した株数は790万株。公募価格1,000円で総額79億円を得ました。
その後、2013年11月に酒販大手のやまや<9994>がTOBでチムニーの株式を取得することを決めました。カーライルは保有していた936万5200株を売却。この取引で、およそ141億円を手にしたことになります。チムニーの上場とやまやへの売却で220億円を稼ぎました。
オリオンビールのTOBは、2019年1月野村ホールディングス<8604>とカーライルが共同で実施。応募数は60万6325株でTOBが成立しています。買い付け額は570億円に上るとみられています。
オリオンビールは1957年創業。沖縄を代表する企業の一つで、ビール系飲料では国内5位の規模。業績は堅調ですが、大幅な増収が実現できていません。
▼オリオンビール業績
(百万円) | 2017年3月期 | 2018年3月期 | 2019年3月期 |
---|---|---|---|
売上 | 27,669 (9.6%増) |
28,009 (1.2%増) |
28,317 (1.0%増) |
経常利益 | 3,249 (64.2%増) |
3,607 (11.0%増) |
3,713 (2.9%増) |
※有価証券報告書より筆者作成
今回のTOBにより、海外の販路を開拓するなど、規模拡大を見込んでいます。
オリオンビールは、沖縄地盤の百貨店リウボウ(沖縄県那覇市)や近鉄グループホールディングス<9041>などと共同で、沖縄県今帰仁村の「オリオン嵐山ゴルフ倶楽部」の用地にテーマパークを開業する計画を立てています。
総事業費は600億円規模となり、2024年末ごろを目途に開業予定。USJの再建で名を馳せた日本を代表するマーケッター・森岡毅氏が代表を務める株式会社刀(東京都品川区)も出資をしています。
カーライルのもとでオリオンビールがどのような変貌を遂げるのか、注目が集まっています。
麦とホップ@ビールを飲む理由
世界的なカネ余りによって、M&Aが世界的に過熱しています。今回は「M&Aが株価に与える影響」について、元証券ディーラーがわかりやすく解説します。